研究概要 |
モジュラー関数体の定義方程式の有限体上の有理解を考察するために,与えられた位数の巡回群を部分群として含むような有理点群を持つ楕円曲線の構成を行った.虚数乗法をもつ楕円曲線を利用する方法では,前年度の研究(基盤研究C(1)課題番号12640036)に引き続き,その虚2次体に於ける素数のノルム形式表示を利用したフロベニウス準同型のトレースの決定法を研究した.計算機実験を積み重ねることにより,前年度に得られた結果の成立範囲を拡張,さらに証明方法の整理を行い,より理論的に普遍性のある結果に改良することができた.これらの結果は平成15年日本数学会の年会,平成15年日本応用数理学会「数論アルゴリズムとその応用」研究部会(JANT)第10回研究集会で発表すると共に,Bullen of the Australian Mathematical Societyに投稿し,平成16年2月にアクセプトされている.引き続き虚2次体の類数が1の場合に於ける2つの虚2次体でのノルム形式表示からフロベニウス準同型のトレースを決めている先行者達の結果とここでの実2次体の類体論を用いて表している結果の理論的結び付きを調べている.虚数乗法をもたない楕円曲線に対しては,大学院博士後期課程学生の研究テーマの一つに取り上げて,研究を行っている.この場合には,p-1が2のべきと,3,5または7のどれか1つのべきとの積となる形の素数pに対して素体上の有理点群が巡回群となるような楕円曲線のパラメトリックな構成の例をつくることができた.モジュラー曲線の定義方程式の有理点に対応する楕円曲線を構成するための方法を見つけるために,J-関数と従来の研究で得られているモジュラー関数体の生成元の間の関係式を求めるための実行可能なアルゴリズムの研究を行い複数の例で計算機実験を実施した.
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