研究概要 |
モジュラー曲線X0(N)の有理点はある性質をもつ楕円曲線の同型類に対応しているので,与えられた有理点から対応する楕円曲線のJ-invariantを計算する方法を求めるのが研究の目的の一つである.X0(N)の関数体の生成元を構成し,その生成元によりJ-関数を有理関数として具体的に表すことができれば,生成元から決まる定義方程式の非特異な有理点に対応する楕円曲線のJ-invariantが計算でき,楕円曲線の同型類が求まる. X0(N)の種数をgとするとき,非ワイエルシュトラス点Pを選び,Pのみで極をもち,その極の位数がそれぞれg+1,g+2である関数からJをその有理関数として表すアルゴリズムを見いだした.問題はそのような性質をもつ関数を構成することであるが,従来このテーマの研究の中で生成元を作るために構成してきたモジュラー関数からある程度は作れることが計算機実験を行うことにより確かめられ,実際Nが6から52までの場合にJ-関数を生成元の有理関数で表わすことができている.一般の場合でも点Pのみで極をもち,位数がg+1から2g+1であるg+1個の関数を見つければ,自動的にJを表す有理式を求めることができる.この方法はX0(N)がhyperelliptic, bi-eliipticでない場合も適用できる.この結果については,現在プレプリントを作成中であるが,1部の結果は,2004年9月の日本数学会秋季総合分科会(北海道大学)で「モジュラー群Γ(N)に関する保型関数体の部分体の生成元によるJ-関数の表示」として発表した. また,他の一つの研究目的である有限体上の巡回的有理点群をもつ楕円曲線の構成では,種数が0の場合のJ-関数の生成元による表示を利用して,有理数体上定義された楕円曲線で特別な形の素数で還元すれば,巡回的有理点群をもつものを構成することができた.この結果の1部は研究協力者である博士後期課程3年の中沢氏直也氏が上記学会で「巡回的なFp-有理点群をもつ楕円曲線のパラメトリックな構成について」として発表した.
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