研究概要 |
質量が太陽の10倍を越える星は、超新星爆発を起こし寿命を終える。鉄より重い(質量数の大きな)ウランまでの元素の起源は、この超新星爆発に求められている。地球の半分程度の大きさに成長した鉄等のコアーが、1秒程度で10km程の中性子星に変わる。コアーの急激な収縮で一気に重力エネルギーが大量に放出され、星の大爆発となる。 このとき、数10億度に達する恒星内部では、地上とは異なり、ベーター崩壊がエネルギー的に低い状態から高い状態に進行し得る(遷移できる)。そこで最も重要な役割を果たすのが、ガモフテラー遷移である。コアーが崩壊を始めると、鉄のようなエネルギー的に低い原子核からマンガン、クローム、チタン、そしてカルシュームというように、元素合成と逆向きに原子番号の低い方向にガモフテラー遷移による反応が進む。これらは、原子核を励起する方向に進むため、地上で自然に起こるベーター崩壊からは研究できない。 我々は、阪大RCNPで(3He,t)荷電交換反応において従来よりほぼ1桁高い分解能を得ることに成功した。この世界最高分解能を活用し、上記超新星爆発の発端となるコアー崩壊に関わるfpシェル核に対し、個別のガモフテラー遷移を実験的に調べている。2003年10月の予備実験に続き、12月にRCNP実験計画審査委員会により認められた約一週間のビームタイムを使い、fPシェル核、チタン46、クローム50、鉄54、ニッケル62,64についてガモフテラー遷移を調べる為の実験を、(3He,t)反応を用いて行った。分解能は世界最高の30keVが得られ、そこで得られたデータを解析する事により、今まで不可能であった個別状態に対するガモフテラー遷移強度が導出できるど意気込んでいる。 今後測定をより広い領域の原子核について行う。その結果は、理論研究に対しても強い制限条件を与えることが予想される。
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