研究概要 |
質量が太陽の約10倍を越える星は、超新星爆発を起こし寿命を終える。鉄より重い(質量の大きな)ウランまでの元素の起源は、多くがこの超新星爆発に求められている。爆発直前には太陽質量の1.4倍程度の大きさに鉄等fpシェル核のコアーが成長するが、そこからのエネルギー生産はなく、不安定になり崩壊を始める。コアーの急激な収縮で一気に重力エネルギーが大量に放出され、星の大爆発となる。このとき、数10億度に達する恒星内部では、地上とは異なり、ニュートリノ起因の逆ベーター崩壊など、エネルギー的に低い状態から高い状態に進行し得る(遷移できる)。そこで最も重要な役割を果たすのが、ガモフテラー遷移である。これらのガモフテラー遷移は、原子核を励起する方向にも進むため、地上で自然に起こるベーター崩壊からは研究できない。 荷電交換反応においては、高励起状態へのガモフテラー遷移の遷移強度が得られることが知られている。しかし従来の研究では、個々の遷移を分離するための分解能不足が問題となっていた。阪大RCNPで行っている(3He,t)荷電交換反応は、この問題を克服した。分散整合法の導入により得られた、30keVという従来比1桁高い世界最高分解能を活用し、上記超新星爆発の発端となるコアー崩壊に関わるfpシェル核、特にチタン46、クローム50、鉄54、ニッケル58、62、64、及びより軽い核についてガモフテラー遷移を調べる為の実験を行った。データ解析を進め、論文として出版し、あるいはまとめつつある。これらはベルギー、ドイツ、スペイン、南アフリカのグループとの共同研究として行った。 得られたガモフテラー遷移の強度分布の結果を理論計算、特にシェルモデル計算や準重陽子モデルと比較した。大枠では最新のシェルモデル計算と良い一致を見たが、細部については改善の余地が見受けられた。 今後の測定はより広い領域の原子核について行う。その結果は、超新星爆発及び、ニュートリノ起因の元素合成の理論研究に対して、強い制限条件を与えることが予想される。
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