研究概要 |
カルデラ内の測点を含む重力観測により求めたブーゲー重力異常は,中心部が周囲より12mgalほど低いスリバチ型の低重力異常を示す.この低重力異常の範囲はカルデラとよく一致する. しかし,湖水の影響を地形補正から差し引くと,摩周カルデラの低重力異常はほとんど消えてしまう.このことは,摩周カルデラの低重力異常の原因となっている低密度物質の大部分が水であり,火砕流やfall backなどのcaldera fillがほとんど存在しないことを示唆する.このことは同時に,湖底の起伏がカルデラ底の形態そのものであることを意味している.摩周湖の湖底は鍋底型なので,摩周カルデラのカルデラ底も鍋底型であり,このことは,カルデラ陥没が,chaotic型やdownsag型ではなく,「plate型」であった可能性を示している。 重力観測の位置決定については,2台の携帯型GPSによるディファレンシャル観測を行なった。摩周カルデラ周辺は,上空の見晴らしがよいことが幸いして,常時8〜9台の衛星を捕捉できた。これにより,標高の精度を0.5〜1.7mの精度で観測できた。この標高精度ならば,重力異常の観測精度は0.1〜0.3mgalとなり,カルデラの重力異常を議論するには十分な精度といえる。したがって,高価で観測に時間のかかる測量用リアルタイム干渉測位GPSを用いずとも,安価な携帯GPSを重力異常観測に使用することができることが判明した。
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