研究概要 |
本研究の研究目的を達成するため,本年度は房総半島に分布する中新統および鮮新統と太平洋低緯度海域で掘削された深海底コアを用いて,そこから産出する石灰質ナンノ化石,珪藻化石および放散虫化石の予察的検討を行った.その結果,それぞれの化石の群集組成が海洋環境に連動してあきらかに変化していることが確認された.なかでもとくに本年度詳しく検討したのは,房総半島に分布する三浦層群で,そのうちの天津層,清澄層および安野層について石灰質ナンノ化石層序と放散虫化石層序を検討した.それらの地層群についてはそれぞれの年代論を微化石の検討に基づき明らかにした上で,予察的に群集の解析を行った.それによると,中新世から鮮新世にかけていくつかの層準で本邦周辺の表層水塊に変化が生じたことが指摘できる.またそこで見られたイベントは,多くの場合,地球規模で気候システムの転換が起こった時期に相当するようであり,黒潮・親潮変動とグローバルな気候システムの変化とは密接に関係しているものと考えられる.さらに,天津層中に見られる底生生物活動は海洋表層からのフラックスに対応しているように見受けられる場合もある.来年度以降,グローバルな気侯システムの変化と本邦周辺における海洋表層環境の変動の具体的な関連について明らかにし,表層一次生産者グループに海洋環境変化が及ぼした影響を解明するため,予察的検討を行った赤道太平洋や北太平洋高緯度地域にさらに詳細な検討を加える予定である.また,本邦周辺においてはひきつづき陸上セクションを調査することにより,底生生物の活動とノジュールの成因について検討を進める.
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