研究概要 |
初年度は主に戦前に記載された古生代サンゴ化石標本に調査対象を絞り,北海道大学総合博物館と東北大学総合学術博物館に協力いただき,それぞれの博物館資料の現地調査を実施した.調査の内容としては,論文の記載文や図版写真を手がかりに,薄片を照合し,一致する標本を見つけ出し,データーベース作成のためのデジタル写真の撮影を行った. 北海道大学では秋吉石灰岩から採集された故小澤儀明博士のコレクションが多数見つかった.さらに同コレクションの未記載標本をタイプ指定し,故湊正雄教授が記載しいることなどが確認された.広島大学に収蔵されるべき,故横山鶴雄博士が帝釈石灰岩から記載したサンゴ化石標本や,故杉山敏郎博士が北上山地シルル系から記載した四放サンゴ類のタイプ標本も北海道大学に存在することが明らかになった.更に,登録番号の重複など,標本管理上の修正すべき点があることが明らかになった. 一方東北大学では,故矢部久克教授や故早坂一郎博士によって,中国各地や国内の古生代石灰岩から採集記載されたサンゴ化石の大部分が保存されていることが明らかになった.これらの薄片にはラベルがなく,記載文や図版との詳細な比較がさらに必要である.また,記載文にタイプの指定がなされていない種や,記載文がなく種名だけが公表された種もあることから,発見された標本を再記載する必要性があることが明らかになった. 本年度末に福岡大学で総括集会を開催し,本年度の成果を確認し,さらに全国の他大学の収蔵情報を分析した.2004年度の調査計画としては,引き続き北海道大学,東北大学で再調査を行うこと,画像を含むデーターベース構築をスタートさせることなどを申し合わせた.
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