本年度は科研費の最終年度として、上記の物質移動の研究についてのまとめを行った。水の凝縮係数について前年度に発表した成果をさらに発展させ、連続液滴法の実験家との議論を通じて実験上の解釈の問題点を明らかにした。さらに気液界面の物質移動について、分子動力学シミュレーションおよび流体シミュレーションを用いた研究成果をまとめて、Pacific Northwest National LaboratoryのGarrett博士らと共同で総説を発表した。 エアロゾル表面構造の解析についても、以前から我々が提案している界面和周波発生分光の理論計算を発展させた。従来の計算手法に対して分子モデリングや分子動力学計算に改良を施し、大規模並列計算を実行することによって、水表面の場合に実験と定量的に比較しうる精度の理論計算が可能であることを実証した。さらに水以外の界面系への応用を図るため、その分子動力学計算に必要な一般的な分極可能モデルの開発を行った。従来から我々が提案しているCharge Response Kernel理論を改良して和周波発生の計算に利用するため、密度汎関数法を基にした理論を開発し、その定量的な精度を実証した。
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