研究概要 |
アゾベンゼンコアに結合するスペーサーとテイル部にトリ(オキシエチレン)鎖を挿入した種々のサーモトロピック側鎖型液晶性ポリオキセタンを合成した。この結果,トリ(オキシエチレン)鎖の挿入によりこれらポリマーの等方相転移温度(T_i)は大幅に低下した。示差走査熱量分析(DSC)の冷却過程で,スペーサー部が-CH_2O(CH_2)_4O(CH_2CH_2O)_3-の場合,メトキシ基テイルでT_iが14.9℃まで低下し,いずれのポリマーも偏光顕微鏡で球晶組織が観察された。LiClO_4を溶解した場合,いずれもDSCで熱的変化を示したが,偏光顕微鏡観察ではメトキシ基テイルのポリマーのみが冷却・加熱過程で針状の組織を示した。LiClO_4の添加によりオキシエチレン基団がLi^+に共同的配位するため,メソゲン同士の間隔が狭まりテイル間での反発を招き液晶相の形成が妨げられるが,テイルが小さい場合は液晶相形成の支障とならない。針状の組織は液晶領域の構造変化によるものと考えられるので,短いテイルのポリマーで本研究の目的とする構造が構築されたと推察できる。一方、テイル部にトリ(オキシエチレン)基を挿入した-O(CH_2CH_2O)_3C_6H_4-p-Fの場合,LiClO_4の添加の有無に拘わらず,室温以上で熱的変化も偏光顕微鏡組織も観られなかった。このT_iは更に低温にあると思われる。電圧印加用試料ホルダーにポリマーを注入し,電圧印加下(1〜3V)で偏光顕微鏡観察したが液晶の変化は観られなかった。試料ホルダー内に溶融したポリマーを注入することが容易でなく,ホルダー内に空隙が多くあったことによる。今回の成果については第54回高分子年次大会(1Pd058,2005年5月,横浜)で口頭発表する。また,液晶性に及ぼす液晶基の構造要素の影響については学術雑誌に投稿して審査中である。
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