研究課題
基盤研究(C)
心臓においてアデノシンA_1受容体は心筋虚血に対する保護作用に関与することが示唆されている。これはいわゆるpreconditioningといわれる概念であり、軽度の限局性心筋虚血の既往がある患者は、重度の広範囲な虚血に対して心筋の非可逆的損傷が、心筋虚血に暴露され既往のない患者に比較して、低い程度と狭い範囲に限られるという臨床知見から提出されたものである。そこで、本研究ではpreconditioningにおけるアデノシンA_1受容体の役割を明らかにすることを目的としてラット虚血再灌流心をもちいて研究を行い以下の結果を得た。(1)左冠状動脈下行枝を絹糸で5分間結紮後10分間再灌流をして作成した虚血再灌流心群では右心室領域においてアデノシンA_1受容体mRNA発現量が増加していることが明らかになったが、左心室領域で実際血流が阻害され、右心室領域に血流が維持されていることを示す目的で、虚血時に蛍光色素を灌流して左心室領域での虚血と右心室領域での血流の維持を確認した。、(2)左心室領域の虚血情報がどのような機序で右心室に伝達されるのかを明らかにする目的で、まず神経性の伝達経路遮断する目的で薬理学的な神経遮断を行ったが、やはり左心室領域の虚血により右心室でのA_1受容体mRNA発現量の増加が確認された。(3)摘出心をランゲンドルフ灌流下で、左冠動脈下行枝を結紮して虚血再灌流心を作成したが、40例中37例で再灌流後心室細動が発生し、データを取得することができなかった。心室細動の発生しなかった残りの3例では、in vivoで得られた実験と異なり、再灌流での右心室におけるA_1受容体mRNA発現量の増加を認めなかった。しかしながら、この3例においてもはっきりとした心室性期外収縮が認められており、これが正しい結果であるか否かは明らかではない。
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