研究概要 |
感染防御においてマクロファージを中心とする自然免疫系細胞群が重要な役割を果たしている。申請者は,細菌性リポ多糖(LPS)の刺激でマクロファージ内で強くリン酸化されるp65/L-plastinを同定した。P65は,calcium (Ca), calmodulin, β-actin結合部位を有する多機能タンパク質で,リン酸化と細胞内Caによって細胞接着分子β_2-integrin (CD11b/CD18)を介した細胞接着活性を制御している。Toll-like receptor (TLR) 4の機能欠損のためLPSに不応答なC3H/HeJマウスでは,p65のリン酸化がおこらず,細胞接着活性も亢進せず,グラム陰性菌に対し易感染性であることから,細胞接着に基づく防御系細胞の生体内の動員が感染防御態勢を整備する上で,極めて重要であると考えられる。TLR-pp65-β_2-integrinシステムの感染防御における役割をさらに解析する目的で,TLR2, TLR4, TLR9の遺伝子ノックアウト(KO)マウスを用いた。また,TLRsのシグナルを伝達する上で重要なアダプター分子MyD88 KOマウスも用い,菌体成分認識分子-細胞内シグナル伝達-pp65リン酸化-防御系細胞動員の感染防御態勢整備での重要性を明らかにするため以下を実施した。(1)TLR KOマウスについて:本年度はTLR4, TLR2, TLR9 KOマウス,およびMyD88 KOマウス(大阪大学 審良静男博士より供与)を繁殖しその遺伝型を決定した。(2)pp65/L-plastinに関して:マウスpp65/L-plastinリコンビナントタンパクおよびモノクローナル抗体を調製した。pp65と細胞内で結合することが示されたgrancalcinのリコンビナントタンパク質およびそれに対する抗体を調製した。(3)in vitro感染実験:各種KOマウスのマクロファージや樹状細胞を菌体で刺激し,細胞内p65変化を免疫組織学的に検出し,細胞の着性亢進との関連を評価した。
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