昨年度はラットの好中球を用いた分析法に関する基礎的検討を行い、貪食能と活性酸素産生能の測定においてある程度条件設定が確立できたので、本年度はヒトの末梢血を用いて検討を進めた。 まずヒトの末梢血では、フローサイトメトリー法を用い好中球、単球、リンパ球の分別に関して、測定後の溶血操作の影響が出ることが判明したため、適切に分別するための操作法を検討し改善を行った。また全血からの各種細胞の分離(単核球・好中球)操作によって、さらに分離後の経過時間によって、活性酸素産生能のみならず細胞表面分子の発現量が低下することもわかり、分離後直ちに測定に入る必要性があることも確認された。一方、活性酸素産生能と各種細胞表面の機能関連分子との関連性を調べるために、細胞表面抗原として補体C3bの受容体であるCD11b(CR3)、IgGの受容体であるCD16(FcRIII)、接着分子のL-selectin(CD62L)、ケモカイン(IL-8)の受容体であるCXCRIの測定条件について検討を行い、それぞれ干渉することなく4種類同時に測定できるようになった。活性酸素産生能との組み合わせ同時分析についても検討を行ったが、hydroethidine(FL2で検出)は蛍光波長域の関係で、FL1とFL2の測定にも影響を及ぼすことが問題となり、現在濃度の調整と他の蛍光物質による検討を進めつつある。以上のように測定条件により結果が大きく左右されることがわかったが、条件を統一することにより、安定した結果が出せるものと判断された。
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