研究概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)は長い年月をかけて肝臓をむしばみ、慢性肝炎から肝硬変、ひいては肝不全、肝癌をひき起こす。本邦でもHCV感染症に対してインターフェロンとリバビリン併用療法が保険適用となったが、ウイルス駆除率は充分ではなく、さらなる治療法開発が急務である。HCVの遺伝子NS3にコードされるプロテアーゼをターゲットとした治療薬開発が試みられてきたが、未だ特異的阻害剤はない。HCVタンパクのProcessingの解析からNS3は少なくともD/E-X-X-X-X-C/T-A/S(D, E, C, T, A, Sはアミノ酸1文字表記、Xは従来の方法でアミノ酸の特異性がみいだされていない)のC/TとA/Sの間を切断することが知られているが、NS3がユニークな立体構造をとることが阻害剤開発を困難にしている。化学合成されたランダムペプチドライブラリーを用いリン酸化酵素の基質のリン酸化モチーフを解析し、阻害剤を設計する試みが行われているが、最近この方法をプロテアーゼの基質特異性決定に応用した例が報告された。本研究では生化学の分野において強力な解析手法となったペプチドライブラリーを肝炎ウイルスプロテアーゼの基質特異性の解析に応用し、阻害剤を開発することを目的とした。 我々は、HCVのNS3領域をGSTに融合したGST-NS3発現ウイルスを作成した。このウイルスを昆虫細胞に感染させ、NS3組換えタンパクを発現し、small scaleにて精製した。GST-NS3融合蛋白は、ゲル電気泳動上分子量約43kDaで、抗NS3抗体に反応した。Glutathioneで溶出することで組換え蛋白の大量調整を試みたが、beadsからの溶出効率が低く、大量精製が困難であった。基質として知られている合成ペプチドを用いた活性測定後、ペプチドライブラリーを用いた配列決定を試みた。
|