研究課題
基盤研究(C)
Factor V R2 haplotype(以下FV R2)は、血液凝固第V因子(以下FV)の多型であり、人類の歴史上、その起源は非常に古いと考えられている。本邦においてもFV R2の存在が予想されていたが、その頻度等は明らかではなかった。また、現在までに報告された複数のマススクリーニングの結果、FV R2は静脈血栓症の危険因子であるという説が有力視されているが、これと矛盾する報告も散見され、FV R2と血栓症の関連は明確ではなかった。研究分担者らは、インフォームドコンセントを得た後、健常人ボランティアよりゲノムDNAの提供を受け、日本人におけるFV R2の遺伝子頻度を解析し、本邦における遺伝子頻度は約10%であることを見出した。また、FV R2と静脈血栓症の関連を分子生物学的に解明するため、in vitro発現系を用いた発現実験、およびリコンビナントFV R2分子を用いた機能解析を行った。発現実験の結果、FV R2分子は野生型FV分子と比較して発現量が低下しており、細胞内輸送が障害される結果、細胞内で分解処理されることを明らかとなった。機能解析では、FV R2分子の活性化と不活性化には問題は見られなかったが、抗凝固活性(APC cofactor活性)が低下しており、FV R2に含まれる特定の変異の組み合わせ(M385T+D2194GまたはH1299R+M1736V)が抗凝固機能に影響を与えることを見出した。さらに、D2194G変異がFV分子のC末端領域の分子構造を変化させ、N2180におけるN型糖鎖の付加効率を増加させることを明らかにした。N2180におけるN型糖鎖の存在は、FVの血栓傾向(トロンビン合成能)を増強することが知られており、D2194G変異による上記の糖鎖付加効率の増加が、FV R2による血栓傾向の一因であると考えられた。
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Thrombosis, Hemostasis, and Vascular Sciences(Chugai Igaku CO.)
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