研究概要 |
ペルオキシソーム欠損症は脳肝腎に重篤な障害を呈する遺伝性疾患で、軽症型患者細胞では温度感受性を有し、臨床的にも発熱とともに発症または重症化する極めて興味深い現象を呈している。本研究者らは本症の温度感受性現象を含めた病態解明にむけて患者細胞やマウスを用いて分子生物学的手法を用いて今年度に以下の成果を挙げたので報告する。 1.胎仔期および発達過程のマウス小脳組織ならびに培養細胞を用いてプルキンエ細胞とグリア細胞におけるペルオキシソームタンパクの局在様式の違いを明らかにし、ペルオキシソーム代謝機能の神経発生に関わる機序を検討した。 2.ペルオキシソーム欠損症において新規相補性群に属するZellweger症候群患者を発見し遺伝子解析および発現実験にて病因がタンパクがペルオキシソームに局在するためのドッキングファクターPEX14遺伝子のナンセンス変異であることを明らかにした。 3.PEX13およびPEX14欠損患者細胞を用いることによりPex14タンパクのペルオキシソームの局在にはPex13タンパクが必要である一方、Pex13タンパクのペルオキシソームの局在にはPex14タンパクは必要ではないことを明らかにした。 4.さらに蛋白相互作用の解析により患者における温度感受性遺伝子変異の位置するPex13タンパクの結合部位SH3ドメインのリガンドとしてPex14タンパクのPXXP部位を推定し,その結合が温度感受性に変化することを明らかにした。
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