研究課題
昨年度の研究実績を踏まえ、本年度は以下の三点について研究を行った。1.当初の計画で使用を予定した薬剤であるセレクチンが販売中止となったため、それに代わり得る薬剤の調査研究を行った。しかしながら、国内で使用可能は薬剤は皆無であった.MRI拡散強調像で外分泌機能を部位別に測定するために膵液分泌の評価以外の方法について模索中であるが、現時点では適当な方法は得られていない。ただし、セクレチンは近い将来に再販売が予定されるとの情報を得ており、そうなれば当初の計画通りに研究遂行可能である。2.通常の拡散強調像から得られる核酸係数には、灌流などの他の現象も関与しているため、それらの影響を可能な限り排除した。真の拡散係数に近い値を半定量化するための研究を行った。最も問題となる灌流の影響を排除するため、躯幹部で使用可能な最大のb値を求めた。その条件での最適撮像シーケンスについてファントム実験を行って、基礎データを求めた後、健常例に適用して調整を行った。さらにADC画像として画像化する場合に問題となるアーチファクトを極力少なくするための条件設定も行った結果、満足できる画像が比較的安定して得られるようになった。3.1.で述べたように臨床の場での、部位別の評価はセクレチン再販売まで待たざるを得ない状況ではあるが、手元にある限られたセレクチンを利用して、正常例におけるセレクチン投与前後での膵実質の拡散強調像の変化を調べる研究を行った。その結果、予想されたとおり、正常膵ではセクレチン投与により、拡散強調像で膵実質の信号変化が観察された。また、セクレチンを投与しない状態でのADC値を、正常例と慢性膵炎例で比較する研究にも着手し、慢性膵炎例の評価を行った。現時点までの限られたデータでは、拡散強調像にて正常例と慢性膵炎例がある程度鑑別可能なことが判明した。精度の向上のために、症例の蓄積を行っている。