1993年より、椎間板の髄核、髄核細胞に注目し研究を開始。96年、臨床研究にて若年の腰部椎間板ヘルニアにおいてヘルニア手術時の摘出髄核の量、摘出した領域よってその後の椎間板変性に差があり、正常髄核の温存が重要であることを報告。その後ラット、ウサギの髄核を吸引することで椎間板変性が起こり、そこに体外培養した髄核細胞を自家移植することで椎間板変性を遅らせることを報告した。そこで人に対しても摘出髄核を培養しヘルニア摘出後にその空洞部に戻すことが理想的だが、手術で得られる組織は殆どが変性髄核であり正常髄核は少ないこと、また髄核細胞はその体内環境から活性が低く、未熟な細胞であり体外にてそのcell characterを維持し、移植に十分な細胞量に増やすことは難しい。そこで近年、再生医学で期待される骨髄間葉系幹細胞(MSC)に注目し、MSCと髄核細胞を体外で共培養し、髄核細胞を活性化する方法を試みた。結果、髄核細胞の細胞増殖能、プロテオグリカン合成能の上昇を確認、さらにウサギの椎間板変性モデルにMSCと共培養後、椎間板内移植し、良好な変性抑制効果を得ている。また、MSC自体を椎間板内に移植することで髄核細胞と同等もしくはそれ以上の変性抑制効果を認めることがウサギのモデルにて確認された。さらに、移植後のMSCが椎間板内で生着し、プロテオグリカンを合成していることもあらかじめMSCにGFP遺伝子を導入し移植後の組織切片を顕鏡下にて発色を確認した。ただ、MSCは髄核細胞に比べより未分化な細胞であり、移植後、肉眼、画像上は髄核様であるが果たして髄核に近い細胞に分化しているのかは、現在、髄核細胞に特異的なマーカーもなく、明らかではない。MSCの椎間板内移植も臨床応用に向けて、髄核細胞マーカーの検索、MSCの体外で髄核細胞への分化誘導方法を研究中である。
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