本研究ではゾウリムシParamecium caudatumを用いて、核アポトーシスの機構を核間(親栄養核、新栄養核、親生殖核、新生殖核)の相互作用という観点から明らかにするとともに、多細胞のCaspases依存型アポトーシスがそのまま適応されるのか、Caspases非依存型であるか検討を進めてきた。ゾウリムシには核アポトーシスと考えられる三つの現象(第1回核アポトーシス:減数分裂後の4生殖核のうちの3核の凝縮退化。第2回核アポトーシス:接合終了後の4仮生殖核のうちの3核の退化。第3回核アポトーシス:接合後の親の栄養核の退化。)があり、これらの共通性を探ることが本年度の一つの目標であった。 1.第1回核アポトーシスについては、関与する遺伝子の単離をサブトラクションにより試み、得られた1000のDNAクローンの中から、100クローンについて塩基配列を決定した。その結果、90%が同じ配列で、わずか4種類の配列が見つかった。これらは、すでに明らかになっている線虫や哺乳類のいずれのカスケード分子群とも類似性はなかった。 次に、核退化にミトコンドリアの関与があるかどうか、ミトコンドリアの核への融合を膜電位から検出するキットを用いて調べたが、シトクロムCとSmac/DIABLOがCaspaseの促進・抑制系に作用しているかどうかを知るための結果は得られていない。 2.第2回核アポトーシスでは、接合後約40時間で分裂できる生殖核と、分裂できない(退化核)生殖核との間に、核内微小管構造に明瞭な形態的変化が起こることを発見した。また、この核アポトーシスは新栄養核によって支配されているという結果も得られた。さらに、この核退化にミトコンドリアの関与があるという結果も得たが、再現性を確認中である。 3.第3回核アポトーシスでは、接合後第5細胞分裂の時期に、新栄養核によって親の大核が壊されるという結果を得ることができた。
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