本研究ではゾウリムシParamecium caudatumを用いて、核アポトーシスの機構を核間(親栄養核、新栄養核、親生殖核、新生殖核)の相互作用という観点から明らかにするとともに、多細胞のCaspases依存型アポトーシスがそのまま適応されるのか、Caspases非依存型であるか検討を進めてきた。ゾウリムシには核アポトーシスと考えられる三つの現象(第1回核アポトーシス:減数分裂後の4生殖核のうちの3核の凝縮退化。第2回核アポトーシス:接合終了後の4仮生殖核のうちの3核の退化。第3回核アポトーシス:接合後の親の栄養核の退化。)があり、これらの共通性を探ることが本年度の一つの目標であった。 1.第1回核アポトーシスについては、関与する遺伝子の単離をサブトラクションにより試み、得られた1000のDNAクローンの中から、100クローンについて塩基配列を決定した。その結果、4種類の配列が見つかった。これらの一つは、すでに明らかになっているSUMO遺伝子と相同性が高いことが明らかになった。最近、P.tetraureliaでは、この遺伝子は、栄養核分化時のDNA編集に関わるという報告がなされているが、本研究では核アポトーシスとの関係も示唆される。 2.第2回核アポトーシスについては、以下の点が明らかになった。(1)過剰小核除去は、栄養期には無く、接合時期に特異的である。(2)分裂小核の決定は、退化機構とは独立である。(3)小核移植実験から、分裂小核の選択決定は、第一細胞分裂の少し前に起こる。(4)小核退化の過程で、核の凝縮は起こらないと考えられる。 3.第3回アポトーシスでは、接合後第5細胞分裂の時期に、それまで新栄養核に接していた親の大核(断片核)は、新栄養核から離れるとともに壊されるという結果を得た。親の大核が新栄養核から離れることと核アポトーシスの機構は不明である。
|