培養細胞やプロトプラストからの個体再生が困難であった、熱帯・亜熱帯の海岸域に生育するマングローブキ各種の培養系を開発し、細胞融合による育種を可能にするため、1)沖縄西表島において採集した、ヒルギダマシ、マヤプシキ、ヤエヤマヒルギ、オヒルギ、メヒルギなどの無菌の材料を得るための準備として種子の室内育成を行った。2)色々な生育ステージの子葉、葉、芽、花器官等から、カルス誘導のための植物ホルモンや培地塩類等の、種類、濃度の最適条件を明らかにするため、少量液体培地を入れた、多穴シャーレあるいは、透明なカバーを用いた平底サンプル管法(申請者が工夫)を用い、無菌培養したまま、倒立顕微鏡観察する方法により、多数の培地条件の検索を行った。ヒルギダマシで若干の増殖が得られ、初めてマヤプシキ子葉からのサスペンジョンカルチャー系を確立した。3)24穴、96穴などの多穴シャーレを用いて各種細胞壁分解酵素の組み合わせと、浸透圧の最適条件を検討した。購入したウェルスキャナーを付属させた簡易倒立顕微鏡による、効率的観察および、データ処理を行うことにより、3科8種のマングローブ葉プロトプラストが単離可能になり、論文発表した。4)さらに、プロトプラストの簡単な精製法を検討し、いくつかの種について、無菌液体培養を試みた。結果の写真画像処理解析のコンピューターによる効率化を試みた。5)外国産ロッカクヒルギの培養細胞のプロトプラスト培養に対する、4種の塩とpHの影響を調べ、耐塩性の弱いポプラや、草本タバコのプロトプラストと比較し、Naに対する若干の耐性のほかに、MgやCa塩による増殖促進効果の特徴を初めて明らかにし、論文発表した。6)5)を参考にして、ヒルギダマシ、マヤプシキの葉組織からの細胞分裂誘導に対し、NaCl以外に、K、Mg、Ca塩に対する反応性の特徴を初めて明らかにし、学会発表した。
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