研究概要 |
[1]非免疫抑制性イムノフィリンリガンドの薬理作用:(1)コンフォメーション病を意識した薬理作用の検索;FK506 (免疫抑制性),GPI1046(非免疫抑制性V10367(非免疫抑制性),rapamycin(免疫抑制性)の4種類のイムノフィリンリガンドがPPIase阻害作用を有することを確認した上で,分子シャペロン様の作用とユビキチンシステムに対する作用について検討する端緒として,HSPファミリーとユビキチンの蛋白発現に対する作用をウエスタンブロット法で検討したところ,4種類のイムノフィリンリガンド全てにおいて顕著な効果を認めなかった.(2)各種ストレスに基づく神経細胞死に対する保護作用については,(A)パーキンソン病(α-シヌクレイン過剰発現)モデル細胞株を用いて検討した.α-シヌクレイン過剰発現株はコントロールである空ベクター導入株に比べて,細胞生存率が有意に低下していることを見い出した.この減少の意味するところは充分に理解できていないものの,α-シヌクレインの過剰発現が少なくともSH-SY5Y細胞においては,毒性を示すことが示唆された.これに対して,4種類のイムノフィリンリガンドを96時間添加してα-シヌクレイン神経毒性に対する神経保護作用を検討したが,いずれのイムノフィリンリガンドとも有効な神経保護作用を示さなかった. [2]ニューロイムノフィリンに関連する神経保護薬の新規候補物質の探索:(1)新規候補物質の探索;出発物質であるLeu-Proは神経栄養因子(BDNF・GDNF)の培養液中への遊離量を溶媒に比べて2倍程度増加させた.これは既存のIPLsの中で最も強力な作用を示すFK506の1.3-1.4倍に比べでもはるかに強い力価を示すと言える.Leu-Pro, Ile-Pro, Val-Proの比較により,N末側の側鎖の炭素数と分岐の位置が神経栄養因子活性化作用には関連する可能性を示した.一方,C末側の化学構造については,N末側がLeuでC末側を変えた5種類のジペプチドで検討したが,BDNFとGDNFとで結果が異なったことから,更なる構造相関解析が必要と考えられた.次に細胞内GSH濃度について検討したところ,出発物質であるLeu-Proは細胞内GSH濃度を溶媒に比べて1.4倍程度増加させたが,これはFK506の力価とほぼ同程度であり,今回検討した中ではLeu-Val, Leu-Met, Met-Proが同様の力価を示した.
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