欧州においては、高等教育質的保証ネットワーク形成の基盤として、2010年の「欧州高等教育圏」形成をめざして採択された「ボローニャ宣言」がある。この路線に沿って進められる「ボローニャ・プロセス」は、「質的保証に関する欧州内での協力促進」を含む6点を主要な柱とする。 欧州における高等教育質的保証のさまざまなネットワークとして、欧州各国の質的保証を行う機関や団体を結ぶ役割を担うENQAの存在がある。その他、ECA、CEE Networkなどの多様な立場からの多様な形をもつリージョナル・ネットワークが形成され、さらにEUAなどの多様なステーク・ホルダーもかかわりながら、欧州高等教育の質的保証に関する国際連携を進めている。 こうした形成が生起した背景として、第2次大戦後の地道な「統一欧州」実現のための取り組みがあり、その成果としてのEUが存在していること、競争と協調の両側面をもった高等教育の国際化・グローバル化、さらに大きな背景としての経済面でのグローバル競争があることなどがあげられる。 また行動原理の特徴として、政治的なトップダウンよりも、当事者(大学人)間での対話・連携が重視されていること(EU条約の「サブシディアリティの原則」が生きていると考えられる)、多様なステーク・ホルダーの存在などがあげられる。 日本・アジアへの含意として、FTAなどの貿易協定や経済共同体的なものは必ずしも前提としないと思われること、質の保障の話を独立させず、高等教育全体での国際協力や交流・連携の促進の一環として、質の保障のネットワーク形成を進める方がより有効性が高まると考えられることなどがあり、課題として、連携調整をはかる国際団体サイドでいかにして中立的な団体をつくれるかということ、また各国サイドでは、誰が「責任ある窓口」となるかという問題が残されているように思われる。
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