異方的超伝導体のギャップ構造を調べるため、圧力下における比熱測定をするための装置開発を中心に行った。まず、比熱測定において最も重要な点である精密な温度測定を可能とするために基準温度からのずれだけをロックインアンプで読むことを可能とする回路を開発した。 また、圧力下での実験に関して技術的なノウハウを得ることおよび異方的超伝導体の基本的な物理量を調べることを目的に、CeCoIn_5の輸送係数の測定を行った。その結果、CeCoIn_5のホール係数は、温度に逆比例して低温で絶対値が上昇する。このホール係数の振る舞いは高温超伝導体でみられる振る舞いと非常に似ていることがわかった。また、CeCoIn_5における磁気抵抗とホール係数が通常の金属で成り立っKohler's則に従わないことを見いだした。そしてこの特異な輸送係数はスピン揺らぎを考慮した修正されたKohler's則に従うことを明らかにした。さらにこれらの特異な輸送係数の振る舞いは、圧力をかけることにより系を非フェルミ流体からフェルミ流体領域に近づけると抑制されてゆくことが明らかとなった。このことはCeCoIn_5および高温超伝導体でみられる特異な輸送現象がスピン揺らぎに由来していることを示唆している。 一方、常圧におけるUPd_2Al_3の超伝導ギャップ構造を調べるために、熱伝導率の磁場方向依存性を測定した。その結果、UPd_2Al_3の磁気ブリルアンゾーン境界に水平にラインノードが存在することが明らかとなった。この結果により、UPd_2Al_3の超伝導発現機構に関する理論模型のうちab面に垂直にラインノードをもつものの可能性を排除することができる。
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