本年度は、「造血細胞移植をうけた患者の体験と対処」について調査した8名の結果を分析し、結果の一部を造血細胞移植学会に発表した。移植後の体験と対処には、大きく「元の自分への希求」「元の自分と現在の自分とのギャップへの葛藤」「現在の自分の承認」という3つの局面が存在し、この局面の以降を支えるものとして造血細胞移植によって「生かされたという思いと自分の生の意味への模索」という局面が存在した。退院後も新たな身体症状の出現のみならず、心理・社会的側面に関わる問題が長期に存在するが、情報源が少ないこと、他者の理解が得られにくく対処が困難な場合もあり、継続的に個別に対応できる支援体制の必要性が示唆された。また「造血細胞移植の治療過程にあるがん患者の情報ニードと情報探求行動の分析」として、現在まで7名に面接調査を実施した。移植前に焦点をあてて2名の分析結果を日本がん看護学会に発表した。結果として1)造血細胞移植患者の移植前の情報ニードとして、移植の影響、移植の実際といった内容と伝え方のニードがあるが、求める情報の量、質には個人差が大きいこと、2)造血細胞移植患者は保証や納得を求めながら、移植の決定をゆるがせないために情報を求める、さけるという相反する情報探求行動をとっていること、3)情報提供のあり方として一般的な情報の提示のみならず、移植の意味・価値付け、揺れる気持ちに対する関わり、信頼関係を深める情報の伝え方を考慮する必要があることが示唆された。今後は、対象数を増やしながら、移植前、移植後の時期による情報ニード、情報探求行動を明らかにし、造血細胞移植患者の情報提供のケアプログラムの作成、実践を評価していく。 看護ネットワークに関する研究では、造血細胞移植をうける患者・家族の看護に関する困難と課題について、アンケートを作成し、全国調査をする予定であり、予備調査として、造血細胞移植に携わっている看護師6名に面接調査を実施し、現在、結果を分析中である。
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