研究課題/領域番号 |
15F15319
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
鎌田 聖一 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (60254380)
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研究分担者 |
KIM JIEON 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2015-11-09 – 2018-03-31
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キーワード | トポロジー / 曲面結び目 / カンドル / バイカンドル |
研究実績の概要 |
曲面結び目は4次元空間に埋め込まれた曲面であるが、その研究において、対象を広げた特異曲面結び目(はめ込み曲面結び目ともいう)を扱う必要がしばしば生じる。特異曲面結び目は4次元空間にはめ込まれた曲面であり、横断的2重点を多重点として許容する。今年度は河内明夫氏の協力を得ながら、特異曲面結び目のモーションピクチャー法と、そこから得られるchダイアグラム表示法(マーカー付きグラフ表示法)について考察を行った。従来の埋め込まれた曲面結び目のchダイアグラム表示法では、マーカー付き交点の平滑化を行った後が自明な絡み目になることが、chダイアグラムの特徴であったが、特異曲面結び目の場合は、H自明な絡み目となることが特徴である。(H自明な絡み目とは自明な絡み目と幾つかのホップ絡み目の分離和として表すことができる絡み目である。)従来の埋め込まれた曲面結び目のchダイアグラム表示法には吉川変形と呼ばれる基本的な局所変形が知られていたが、特異曲面結び目ではホップ絡み目に関連する変形も必要となり、本質的と思われる基本変形を発見した。この変形だけで十分であるかという問題はまだ解決に至っていない。特異曲面結び目で球面のはめ込みになっているもの(特異2次元結び目)で、本質的な2重点を持つ具体例も構成した。 バイカンドルを用いた曲面結び目の不変量の構成には、それに利用するためのバイカンドルを用意する必要がある。国内の複数の研究者と協力して、多重共役カンドルの一般化である多重共役バイカンドルの研究を行い、その基本的性質を明らかにした。 平成29年1月に東京大学で開催された国際会議「The 12th East Asian School of Knots and Related Topics」で特異曲面結び目のchダイアグラム表示法と吉川変形の拡張に関する研究成果の発表をJieon Kimが行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
chダイアグラムによる表示法の対象を特異曲面結び目に広げたことは、特異曲面結び目の具体例を構成する際に有効である。カンドルやバイカンドルを用いた曲面結び目不変量を特異曲面結び目に拡張するには、定義の補正が必要となるが、その計算を行う際にchダイアグラム表示を利用することも可能となる。
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今後の研究の推進方策 |
多重共役バイカンドルの研究によって多くのバイカンドルの例が得られることがわかった。多重共役バイカンドルの(コ)ホモロジー群を計算することは容易ではないと思われるが、コサイクルの候補を見つけることができれば、コサイクル、シャドーコサイクル不変量を構成することは可能となる。これらの不変量の具体例の構成を行いたい。対称バイカンドルを用いたコサイクル、シャドーコサイクル不変量を曲面結び目について定義し、その計算法を開発する研究も実施していく。
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