研究課題/領域番号 |
15H01715
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村田 智 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10334533)
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研究分担者 |
中茎 隆 九州工業大学, その他の研究科, 准教授 (30435664)
川又 生吹 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30733977)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | DNAコンピュータ / 分子ロボティクス |
研究実績の概要 |
本研究においては,分子ロボットの制御問題に,シーケンス制御などのマクロシステムで確立された制御工学の方法論を導入することを目的としている.具体的には,分子ロボットの時系列行動プログラムのために必要な基本回路の設計法および実装技術を開発することを目的として研究を進めた結果,今年度は以下の進捗があった. (1)プログラムした時系列に従って,決められた塩基配列をもつDNA鎖を順次出力するシステム(PSG)の実験に成功した.PSGは信号の発信順序を塩基配列上に記述したDNA一本鎖をプログラムとして,順次記述通りのDNA鎖を出力する反応系であり,3信号の出力(6通りの順列組み合わせ)すべて,および4信号の定量性および再現性のある出力実験に成功した.また,この反応系の動的シミュレーションモデルを構築し,反応ダイナミクスのモデル化にも成功している.これらの成果をDNA22国際会議に投稿し,現在ジャーナル論文を執筆中である.またDNAピンセットを対象プラントとしたDNA反応系の開発に着手し,3ステップの開閉動作を行う反応系を設計した. (2)DCRを設計する際に問題となる制約は,制御計算に必要となる偏差情報をどのように獲得するかにかかっている.本研究では,偏差情報を陽には用いないコンパレータベースのオン・オフ制御系を採用することで,非負信号(特定のDNA鎖の濃度値)による極性信号を表現し,DCRのプロトタイプの構築に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)本研究で設計したPSGはDNAのハイブリダイゼーション反応と酵素反応が連鎖的に起こるシステムである.入力DNAにエンコードされた情報に従って,決められた出力DNAが望みの順番で放出される.電気泳動法により要素反応,出力の数が3つの場合すべての組み合わせ,4つの場合の一例を実験的に確認し,PSGのプログラム可能性およびスケール可能性を実証した. (2)DNA回路のモジュール性を理論的に取り扱うことが,DCRの設計に不可欠であったため,遡及性理論を導入し,検討を進めた.現在,DCRの設計理論は完成し,数値シミュレーションでの動作検証も完了している.
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今後の研究の推進方策 |
(1)開発したPSGを応用して,DNAロボットのシーケンス制御を行う予定である.すでにDNAピンセットの制御に応用可能か検討を始めているが,予期せぬ非特異反応が原因でDNAピンセットの動作が停止してしまう問題が見つかった.今後は開発に着手した反応速度論的シミュレータを完成させ,非特異反応の原因特定,解決を行う. (2)DCRのウェット実験での動作検証に向けて,DNA塩基配列設計を行っている.また,DCR内のDNA鎖の初期濃度や各種条件と制御性能の関係は不明な点が残されているため,理論的な解析を行うとともに実験的な検証も進めていく計画である.
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