研究課題/領域番号 |
15H01861
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清水 哲郎 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 特任教授 (70117711)
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研究分担者 |
会田 薫子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 特任准教授 (40507810)
田代 志門 国立研究開発法人国立がん研究センター, 社会と健康研究センター, 室長 (50548550)
霜田 求 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (90243138)
浅井 篤 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80283612)
濱中 喜代 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (70114329)
宮下 光令 東北大学, 医学系研究科, 教授 (90301142)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 倫理学 / 臨床倫理 / 皆一緒 / 人それぞれ / 意思決定プロセス / 意思決定支援 / 看護倫理教育 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、研究代表者を核とするコントロールチームの下で、3つのチームが相互の連絡をとりつつ、各チームが分担する研究を進めた。
① 哲学・倫理チーム:《皆一緒》と《人それぞれ》という二つの対人姿勢ないし行動様式が人間に並存しており、この二つのブレンドにより人間における倫理を説明できることを前年度に確認したが、これが現代社会における倫理にかかわる現象を説明するのに有効であり、ことに私たちがどのような社会を創ろうとしているかと連動していることを確認した。ここから国家・行政が医療事業を行う際に基礎になっている社会における人間関係の理解が、医療従事者の倫理として表現されてもいることを認めるにいたった。 ② 臨床倫理実践チーム:全国各地の協力グループと協働して、臨床倫理セミナーを11回(札幌2回、諏訪、仙台、金沢、鹿屋、松山、大阪、佐久、久留米、大阪)、ファシリテーター養成を3回(札幌2回、大阪)行い、その結果を研究開発に反映させて臨床倫理事例検討法の改訂および簡易版の開発を行った。 ③ 大学教育課程への組込みチーム:前年度に作成したカリキュラム案に基づき、第1学年で行う「探求の基礎」についてはシラバス案、授業案の一部を作成し、「看護倫理」、「臨床倫理」のシラバスを検討した。 ④ コントロールチーム: 3月に臨床倫理をテーマとするシンポジウムを開催し、約930名の参加を得て、協力者たちの実践を提示する意思決定支援をテーマとするシンポジウムと研究代表者による①の成果の提示を行った。全国ネットワークについては交流の場であるホームページの立ち上げまで到達した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各チームがその担当テーマについて順調に研究を進め、一部は当初計画以上の進展をしているが、やや遅れぎみの部分もある。
① 哲学・倫理チーム:行政が行う医療事業は社会における人間関係をどう把握するかを反映しており、したがって、その医療事業を実際に遂行する医療従事者もその人間関係に定位した倫理を社会的要請として携えることになるという作業仮説にいたった。これは本研究として重要な論点となるであろう。 ② 臨床倫理実践チーム:臨床倫理セミナーを事例検討法開発のアクションリサーチの場として取り組み、事例検討法の要となる部分について重要な改訂をすることができた。また、現場からの要請に応ええる簡易版の開発も行い、現場に提示できた。これらは当初の計画以上の進展である。 ③ 大学教育課程への組込みチーム:研究の進展と平行して、この組込みの実証を行う大学が決まった。すなわち、看護学単科大学として平成29年開学の岩手保健医療大学であり、研究代表者が学長となり、研究分担者の一人が学部長となるところである。組込みを同大学にとって重要な看護教育の柱の一つとすることを含め、設置を認可されたので、次年度からのより具体的成果が期待できる。 ④ コントロールチーム:①と②、①と③の連動の調整は旨くいっているが、全国ネットワークの活動開始が予定より遅れている。しかし、年度末にウェブサイトを立ち上げたので、次年度に後れを取り返せる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
① 哲学・倫理チーム:本年度に到達した国家ないし行政が社会の公的仕組みを作る際に基本におく、社会における人間関係の理解と医療従事者への社会的要請(倫理の内容)が連動するという作業仮説を吟味して、根拠ある主張にしていく。その際人間における倫理の成立について、人類の進化に関する最近の研究成果と突き合わせつつ、実証的アプローチではなく、論理的アプローチをしている本研究の立場を明確にしていく。 ② 臨床倫理実践チーム:臨床現場に通じるプレゼンテーション、検討シートのさらなる改訂をする(本年度改訂結果は概ね好評であり、表現・様式レイアトの微調整で済む見込み)。また、セミナー等開催の仕方についても各地のグループと考えを調整していく。これについてはネットワーク造り(④項参照)と連携して進める。また、若手研究者の参加を募っていく。 ③ 大学教育課程への組込みチーム:次年度開学の岩手保健医療大学において組込みを試みるところが、重要であり、研究代表者自身が第1学年の「探求の基礎」を担当する。学生自らが考え、話し合うことを通して、倫理一般および臨床倫理の基礎的なところを見出すにいたることを目指す。本研究の限りでは、第2学年までで、第3学年以降の実証研究ができないため、研究期間の延長ないし新たな研究計画を立てる必要がある。 ④ コントロールチーム:全国各地の研究者とケア従事者のネットワーク造りに重点をおく活動が課題である。臨床倫理ネットワーク日本(clinicalethics.ne.jp)が今後のアクションリサーチ、およびプロジェクトの研究成果の全国の医療機関への実装推進の拠点となる。
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備考 |
H28年度末段階では(1)と(2)は並存していた。(2)が本報告で立ち上げたと説明した研究者と医療従事者のネットワーク。H29年度に研究代表者の所属が変わったため、今後(1)は臨床倫理プロジェクトの東京大学ブランチのサイトとなり、(2)に同プロジェクト全体のホームページが作られ、両サイトを再編する予定。いずれにせよ、上記のURLから入って全体を見ることができる予定である。
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