研究課題
本研究では、量子臨界点近傍の超伝導について着目し、量子臨界性に伴う様々な異常物性が超伝導にどのように影響を及ぼすかを明らかにすることを目的としている。平成30年度においては、過剰ホールドープ系の(Ba,Rb)Fe2As2系の単結晶試料において、正方晶の[100]および[110]方向に一軸歪みを加えた状態における弾性抵抗測定を行った。その結果、ドープ量が少ない領域では、他の鉄系超伝導体でみられるように、Fe-Fe方向の電子ネマティック揺らぎが大きいのに対して、高ドープ領域では45度方向異なるFe-As方向の揺らぎが大きくなることが明らかになった。特に、最もホールが多いRbFe2As2では、38ケルビン以下でFe-As方向のネマティック秩序が形成されている証拠を得た。この結果は、鉄系超伝導体において、通常のFe-Fe方向とFe-As方向の、2つの異なる電子ネマティック相が存在することを明らかにしたものである。また、同様な実験をCsFe2As2において行ったところ、RbFe2As2と同様にFe-As方向のネマティック揺らぎの増大が観測されたが、ネマティック秩序は低温まで観測されず、ネマティック量子臨界点の近傍の振舞いが見られた。今後、CsとRbの混晶系の研究により、ネマティック量子臨界点の実現が期待される。次に、Fe(Se,S)系超伝導体について、オランダ高磁場研究所との共同研究により、磁場で超伝導を抑制した状態における輸送現象の測定を行った。この系ではFeSeで90ケルビンに現れる電子ネマティック秩序がS置換により抑制されネマティック量子臨界点の存在が示されている。本研究により、このネマティック量子臨界点近傍で、低温まで温度に比例する電気抵抗率の温度依存性が観測された。この結果は、ネマティック量子臨界ゆらぎにより非フェルミ液体的振舞いが現れることを明らかにしたものである。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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