研究課題/領域番号 |
15H02155
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊藤 早苗 九州大学, 応用力学研究所, 特任教授 (70127611)
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研究分担者 |
小菅 佑輔 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (00700296)
小林 達哉 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (30733703)
伊藤 公孝 中部大学, 総合工学研究所, 特任教授 (50176327)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プラズマ乱流 / 複数駆動源 / 強相関 |
研究実績の概要 |
圧力勾配や速度の不均一性等からプラズマ乱流が発達、巨視的な極性ベクトル場や軸性ベクトル場が確率的に生じ競合・干渉する。この研究計画では、それを「強相関乱流プラズマ」と定義し、多種の干渉しあう非線形過程を通じて生じる巨視的構造形成について研究する事を目的とする。 具体的な例として、密度勾配乱流により速度不均一が生じ、二重連結流が生まれることが示された。発達する二重連結流構造をトポロジカルインデックスで評価した。一方、密度勾配乱流がミクロな局所拡散的な輸送を生むだけではなく乱流塊の移送とともに大域的な輸送現象が生じることが知られているが、その時に、顕著な運動量輸送を生み、特異な流れ構造を生み出すことが見出された。流れ場の変動と乱流塊の移送メカニズムに関する研究も進めた。 非平衡性について加熱エネルギー源や密度補給源まで取り入れ、より広い自由度まで含めた研究への発展を始めた。一例として、高温プラズマ中の乱流駆動熱流が、局所的な拡散モデルに従わず、勾配―熱流関係にヒステリシスが現れることが近年知られて居る。それに着目することで周知の難問「閉じ込め時間の水素同位体効果」に理解が進むのではないかとの着想を得た。また、磁気アイランドという磁場のトポロジーが異なる状況で乱流と流れの結合がどのような様相を示すか、研究を進めた。磁場トポロジーによる揺動のモジュレーションと、帯状流のような流れによる乱流揺動のモジュレーションという、二つの非線形過程が共存競合する状況を観測することに成功し、研究の新展開を促した。 さらには、3次相関を観測することで、強相関乱流の様々な非線形相関・干渉効果を研究することが可能であることを説明し、実験家向きのまとめも発信した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
密度勾配乱流により速度分布が急峻化し、速度勾配駆動乱流により密度分布が急峻になる過程をはじめ、スカラー場とベクトル場の乱流輸送干渉を実験的に検証するなど、大きな成果が得られて居る。異なる軸性ベクトル場の乱流輸送の干渉を観測する方法を提示するなどの成果も得られている。粒子補給が乱流揺動を駆動するなど新規な発想を含む研究が発展している。予想以上に進展して居ると結論する。
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今後の研究の推進方策 |
今までの研究により成果が充実し、強相関乱流の性質や実験による確認法等の研究が大きく進んだ。当初計画に従い、複数の揺動や流れの干渉と競合、非線形散逸率の理論と実験との比較、粒子や運動量の流束の観測と因果関係の検定、などの課題に研究成果が得られて来た。クロスバイスペクトルに着目した実験研究法のレビューも出版した。 今年度には、密度勾配や磁場方向流れ場勾配が駆動する揺動(ドリフト波やD’Angeloモード)、そしてメソスケールやマクロスケールをもつ揺動が混在する多スケール乱流が発達する問題に取り組み、幅広い状況を対象に、理論研究を展開する。状態の遷移や選択則を、流れのトポロジカルインデックスとして評価する方法を得たが、その定式化により普遍的な見通しが得られるか否かにチャレンジする。研究対象もさらに一般化する。今までの研究は、流れ場構造が軸対称性を持つ場合を中心に研究して来た。一方、多種流れの勾配が共存する状況での研究を進めた結果、流れ場が対称性を破り、ストリーマーのような局在構造を作り、帯状流構造と競合する可能性がある。こうした状況の研究にも着手する。位相空間の自由度の効果も検討する。 強相関乱流を考察するための切り口として、非平衡性の特徴を、多種の勾配と流れの共存と言う視野から研究してきたが、それに留まらず、外部からの供給源(外部加熱や粒子補給)を含むべく拡張も試みる。 実験では、基礎実験装置PANTAや乱流計測シミュレータを活用する。周波数および空間のなかで、乱流構造の選択則の検証に着手する。一方、本研究計画の成果に基づき、大型閉じ込め実験装置での複数の流れ勾配の競合による新たな動的応答の可能性が指摘され、ストリーマーの発生の観測を指導した。それらの国際的共同実験観測の解析を進める。
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