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2017 年度 実績報告書

キナーゼ融合型がん遺伝子を標的にした阻害薬に対する耐性化の機構解明と克服法の探索

研究課題

研究課題/領域番号 15H02368
研究機関公益財団法人がん研究会

研究代表者

藤田 直也  公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター, 所長 (20280951)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2020-03-31
キーワード癌 / 薬剤反応性 / 融合遺伝子 / 分子標的治療
研究実績の概要

キナーゼ融合型がん遺伝子を標的にした阻害薬は、融合型がん遺伝子陽性の進行がんに対して劇的な腫瘍縮小効果をもたらすことから、大きな注目を集めている。しかし、阻害薬がいったん奏功しても完治につながる症例はまれであり、多くの場合は阻害薬が効かなくなってしまうという獲得耐性が生じ、数年以内に再発が起こる。
本研究課題では、(1)培養細胞株、(2)担がんマウスモデル、を用いた薬剤耐性細胞・耐性腫瘍の樹立に加え、(3)耐性患者検体からの耐性腫瘍細胞株樹立を並行して行い、これら3つの手法を比較しながら獲得耐性に関わる融合型がん遺伝子の変異解析や耐性機構の解析を進めている。平成28年度に引き続き、平成29年度ではNTRK融合型がん遺伝子を標的にした阻害剤耐性化機構の解析を進め、新規耐性機構を含む複数の耐性機構とその耐性克服法の発見に成功し、論文として発表した。さらに、ALK融合型がん遺伝子陽性肺がんにおける次世代阻害薬Lorlatinibへの獲得耐性機構の解析を進め、2つ以上の変異が重複することで次世代ALK阻害薬への耐性を獲得していることを、培養細胞モデルおよび担がんマウスモデルでの解析で明らかにした。この重複変異の一部は、第一世代のALK阻害薬に感受性であり、次世代ALK阻害薬に耐性を獲得した後でも再び第一世代ALK阻害薬で治療可能であることが示唆された。臨床検体からの培養株化とその耐性機構解析では、既知の耐性変異の症例も多く認めたが、既知の耐性機構とは異なる耐性化機構を新たに見いだすことができた。遺伝子変異解析・細胞内シグナル伝達解析・阻害剤スクリーニングを実施し、新規治療法をを見出すことに成功している。また、ROS1融合型がん遺伝子陽性のがんにおいて、治療薬が低濃度で存在すると増殖能が増加する変異体を見出すことに成功し、その阻害薬依存的増殖のメカニズムの一端を解明して論文報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

究代表者らはこれまでに、(1)培養細胞株、(2)担がんマウスモデル、を用いた薬剤耐性細胞・耐性腫瘍の樹立に加え、(3)耐性患者検体からの耐性腫瘍細胞株樹立を並行してすすめることで、ALK, ROS1等が融合したがん遺伝子陽性がんの新規薬剤耐性機構を世界に先駆けて発見・報告してきた。平成29年度では、NTRK融合型がん遺伝子陽性がんにおける獲得耐性機構と耐性克服法を発見することに成功し、論文として世界に先駆けて発表した。さらに、ALK融合遺伝子陽性肺がんを用いた検討により、次世代ALK阻害薬耐性機構を複数発見することに成功し、論文投稿を現在行なっている。また、ROS1融合型がん遺伝子陽性がんでは、ユニークな阻害薬依存的増殖をする耐性変異を発見し、その分子機構の一端を解明して論文として発表した。以上のように、当初の計画以上の進展が成し遂げられているため。

今後の研究の推進方策

ALK融合遺伝子陽性肺がんでわれわれが見出した次世代ALK阻害薬へ耐性を示す重複変異の1つは、海外の患者で実際に発見され論文報告された。この重複変異はあらゆるALK阻害薬に高度耐性を示すばかりか、他の様々なキナーゼ阻害薬にも耐性を示す。今後、この耐性変異をも克服できる薬剤を、化合物ライブラリーの幅を広げて進め、見出していきたい。また、ROS1融合遺伝子陽性がんにおける薬剤依存性耐性変異としてわれわれが報告した変異部位に関して、ROS1との相同性が高いALKが陽性の肺がん患者でも同様な変異が起きていることが報告された。薬剤添加による増殖促進がが薬剤依存性耐性変異を持つALK融合遺伝子陽性肺がんでも認められたことから、ALKでも薬剤依存性耐性変異が存在する可能性が示唆されている。そこで今後は、阻害薬依存的な増殖といった治療薬耐性に関わる現象の普遍性とその背景を構成する分子機構の詳細を明らかにしていきたい。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] TKI-addicted ROS1-rearranged cells are destined to survival or death by the intensity of ROS1 kinase activity.2017

    • 著者名/発表者名
      Hayato Ogura, Yuka Nagatake-Kobayashi, Jun Adachi, Takeshi Tomonaga, Naoya Fujita, Ryohei Katayama
    • 雑誌名

      Sci. Reports

      巻: 7 ページ: 5519

    • DOI

      10.1038/s41598-017-05736-9

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Mechanisms of resistance to NTRK inhibitors and therapeutic strategies in NTRK1-rearranged cancers.2017

    • 著者名/発表者名
      Miho Jane Fuse, Koutaroh Okada, Tomoko Oh-hara, Hayato Ogura, Naoya Fujita, Ryohei Katayama
    • 雑誌名

      Mol. Cancer Ther.

      巻: 16 ページ: 2130-2143

    • DOI

      10.1158/1535-7163.MCT-16-0909

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] がん患者検体を用いた腫瘍組織の統合解析と新薬開発2018

    • 著者名/発表者名
      藤田直也
    • 学会等名
      理研・生命医科学シンポジウム「新たな生命医科学の融合 ~ゲノム・免疫・疾患システムを究める~」
    • 招待講演
  • [学会発表] Development of the molecular targeted therapy in memory of Dr. Takashi Tsuruo2017

    • 著者名/発表者名
      藤田直也
    • 学会等名
      第76回 日本癌学会学術総会
    • 招待講演
  • [学会発表] ブリガチニブと抗EGFR抗体の併用がC797S/T790M変異によるオシメルチニブ耐性を克服する2017

    • 著者名/発表者名
      内堀 健、藤田直也、片山量平
    • 学会等名
      第76回 日本癌学会学術総会
  • [学会発表] Driver Oncogene陽性肺がんにおける獲得耐性の分子基盤と新たな治療戦略2017

    • 著者名/発表者名
      片山量平、藤田直也
    • 学会等名
      第76回 日本癌学会学術総会
    • 招待講演
  • [学会発表] Resistance mechanisms to NTRK-TKIs in NTRK1 rearranged cancer平2017

    • 著者名/発表者名
      大原智子、佐藤重夫、藤田直也、片山量平
    • 学会等名
      第76回 日本癌学会学術総会
  • [学会発表] EGFR-C797S/T790M多剤耐性肺癌に対する新規療法2017

    • 著者名/発表者名
      内堀健、稲瀬直彦、荒木望嗣、鎌田真由美、佐藤重男、奥野恭史、藤田直也、片山量平
    • 学会等名
      第15回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO)
  • [学会発表] G1202R変異型EML4-ALKの変異蓄積による次世代ALK阻害剤Lorlatinib耐性の獲得2017

    • 著者名/発表者名
      岡田康太郎、藤田直也、片山量平
    • 学会等名
      第20回日本がん分子標的治療学会
  • [学会発表] Driver oncogene陽性肺がんにおける多様な分子標的薬耐性とその克服法2017

    • 著者名/発表者名
      片山量平、藤田直也
    • 学会等名
      第20回日本がん分子標的治療学会
    • 招待講演
  • [学会発表] cMET増幅を介したALK阻害薬耐性とその克服法2017

    • 著者名/発表者名
      小池清恵、藤田直也、片山量平
    • 学会等名
      第20回日本がん分子標的治療学会
  • [学会発表] Identification of the molecular mechanisms of resistance to NTRK inhibitors and the potential therapeutic strategies in NTRK1-rearranged cancers.2017

    • 著者名/発表者名
      Ryohei Katayama, Miho Jane Fuse, Tomoko Oh-hara, Hayato Ogura, Naoya Fujita
    • 学会等名
      AACR Annual Meeting 2017
    • 国際学会
  • [学会発表] Analysis of "drug addiction" mechanisms in the drug-resistant ROS1-rearranged cancer cells.2017

    • 著者名/発表者名
      Hayato Ogura, Jun Adachi, Takeshi Tomonaga, Naoya Fujita, Ryohei Katayama
    • 学会等名
      AACR Annual Meeting 2017
    • 国際学会
  • [備考] がん研究会がん化学療法センターのホームページ

    • URL

      http://www.jfcr.or.jp/chemotherapy/index.html

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公開日: 2018-12-17  

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