研究課題/領域番号 |
15H02479
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
菊水 健史 麻布大学, 獣医学部, 教授 (90302596)
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研究分担者 |
大野 博司 国立研究開発法人理化学研究所, その他部局等, その他 (50233226)
茂木 一孝 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (50347308)
宮内 栄治 国立研究開発法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (60634706)
森田 英利 岡山大学, その他の研究科, 教授 (70257294)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 早期離乳 / ストレス / 腸内細菌叢 / 前頭葉 / BDNF |
研究実績の概要 |
早期離乳マウスの不安増強効果の永続的な機能を調べるため、恐怖条件付け後の消去抵抗性を評価した。恐怖条件付けを受けた早期離乳マウスでは消去学習が上手く行われず、消去過程の後半における消去の抵抗性が増加し、前頭葉のBDNFⅢmRNA及びBDNF蛋白質が低下した。さらに、これらの間には負の相関もみられたことから、早期離乳による恐怖記憶の消去抵抗性には、前頭葉におけるBDNFⅢmRNAの発現低下を介したBDNF作用の減弱が関わっていることが想定された。 幼少期の腸内細菌叢が及ぼす社会不安障害への影響を明らかにするため、無菌マウスを4週齢でSPF由来の通常マウスと混飼育を行い、細菌叢の均一化を図った。その結果、無菌マウスで認められていた個体間距離の延長や脳内前頭葉のBDNFの低下、FosBの上昇が改善した。このことは細菌叢による社会不安障害の形成には幼少期特異的な効果があることが示された。 これまで早期離乳された雌マウスの母性行動の低下とそれに続く次世代マウスの母性行動の低下を見出していた。この遺伝子によらない伝承機構の解明を目指し、早期離乳マウスが出産した後、通常離乳メスの子と入れ替える里子操作を行った。里子効果が認められ、幼少期環境が母性行動を変化させることが明らかとなった。この時、母親由来の細菌叢の伝達が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
早期離乳によるグルココルチコイドの長期的がBDNFを低下させる分子の同定には至っていないものの、幼少期の腸内細菌の変化が中枢に刻まれる可能性を見出した点は評価できる。またこの幼少期の細菌叢の影響は幼少期に特異的であることも見いだせた。BDNFのエピジェネティクスな制御はプロモーターIIIが最も関与することが明らかとなり、ターゲットを絞った解析が今後実施可能となった。ただしDNAメチル化に関するヒストンH3のトリメチル化を調べたが変化がなかったため、他の修飾を調べる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
幼少期の腸内細菌叢の操作による不安行動、認知機能、ならびにストレス応答性を調べ、腸内細菌叢の役割を明らかにする。その結果を受け、腸内細菌叢のもたらす影響に絞り、高グルココルチコイドが維持されるメカニズムを腸内細菌叢から始まり中枢の分子まで調べる。またBDNFのプロモーターIIIの上流部位のDNAメチル化とヒストン修飾を網羅的にしらべ、BDNFの刷り込みプロセスを明らかにする。また前頭葉におけるBNDFの低下が扁桃体への抑制制御に繋がり、最終的に不安行動の上昇と思われるため、前頭葉から扁桃体に至る回路を人為的に再活性化し、不安行動が改善するかを調べる。
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