研究課題
① インプリント遺伝子へのpiRNA依存的DNAメチル化誘導:MIWI2プロモーターによって母性インプリント遺伝子であるPeg10およびSnrpnのアンチセンス遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを作成した。これらのトランスジェニックマウスにおいてトランスジーンが発現していることを確認し、正常な雌マウスとを交配することにより、子マウスに異常を来すかどうかの解析をおこなった。しかし、残念ながら顕著な異常は認めることができなかった。② ヒストン修飾酵素およびその関連遺伝子のpiRNA依存的DNAメチル化誘導:ヒストンH3K4のメチル化に関与するMLL遺伝子ファミリーと、それらと協調して機能するAsh2LのpiRNA依存的人為的な雄性生殖細胞におけるDNAメチル化誘導による発現抑制を試みた。予備的な発現解析からMLL1~4のいずれもが候補として適切であることが確認できたため、これらのアンチセンス鎖をMIWI2プロモーター制御下において発現するトランスジェニックマウスの作成をおこなった。MLL2のアンチセンスを発現するマウスにおいて、産仔の異常が存在するのではないかという予備的な成果をえることができた。③ ヒストン修飾酵素を発現するトランスジェニックマウスの作成と解析:H3K9me2を特異的に脱メチル化する酵素であるjhdm2a、および、H3K27me3を脱メチル化する酵素であるjmjd3を精子形成過程において発現するトランスジェニックマウスを作成し、それぞれのトランスジーンの発現を確認した。
3: やや遅れている
① インプリント遺伝子へのpiRNA依存的DNAメチル化誘導の実験において、トランスジーンを発現するマウスを作成することができたが、残念ながら、その子孫において異常を認めることができなかった。詳細に検討したところ、piRNA依存的な遺伝子発現抑制が生じていないことが明らかになった。従前の研究から、研究開始当初には十分に実現可能であると考えていたが、それに至らなかったことから、その理由の解明をおこなう必要が生じてきた。一方、② ヒストン修飾酵素およびその関連遺伝子のpiRNA依存的DNAメチル化誘導、および、③ ヒストン修飾酵素を発現するトランスジェニックマウスの作成と解析については、トランスジェニックマウスの作成を終了し、解析を開始することができたので、ほぼ順調に進捗したと考えている。
【現在までの進捗状況】に記載のとおり、① インプリント遺伝子へのpiRNA依存的DNAメチル化誘導の実験において、piRNA依存的DNAメチル化誘導が想定どおりに進捗しなかったことから、実験システムの最適化が必要であると判断した。以前の研究において、内在性の遺伝子であるDNMT3Lを、DNMT3Lのアンチセンス鎖を発現させることによりpiRNA依存的にDNAメチル化誘導し、遺伝子サイレンシングを生じせしめることができることを明らかにしている。しかし、そのシステムがうまくいかなかったことから、そのDNAメチル化がどのように生じているのかを詳細に検討することが必要であると考えられた。そこで、DNMT3Lのアンチセンス鎖トランスジェニックマウスの、トランスジーン挿入部位の詳細な解析を開始することとした。他の二つのプロジェクトである② ヒストン修飾酵素およびその関連遺伝子のpiRNA依存的DNAメチル化誘導、および、③ ヒストン修飾酵素を発現するトランスジェニックマウスの作成と解析については、予定通りに研究を推進していく。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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