研究課題
ゲノム不安定化を誘発する先天性希少疾患及び小児がん症例を海外拠点の患者家族会や研究者、臨床医、関連施設・病院の協力のもと収集し、ゲノム・分子疫学調査を実施した。本研究期間は、DNA損傷応答・DNA修復機構の異常により小頭症や発育異常などを示す症例の収集に力を入れた。主に、ヨーロッパやアジア、アメリカの患者で疾患原因が未同定である症例を集めた。また、アジア、ロシア、ヨーロッパの症例を中心に、小児/若年性がんサンプルのほか、免疫不全などゲノム不安定性により造血機能異常を示す症例について収集を進めた。収集したこれらの症例は、国内でゲノム解析及び疾患原因変異の特定を行った。コケイン症候群が疑われ、新規の疾患責任遺伝子変異が同定された症例に関して、本遺伝子XとDNA損傷応答あるいはDNA修復システムとの関係を明らかにするため、より詳細な分子機能解析に取り組むと同時に、同遺伝子Xの異常で疾患を発症している他の症例探索を進めた。一方、既存の疾患と類似の病態を示すにも関わらず、既知の遺伝子に疾患原因変異が認められない症例も多数抽出されており、これらの症例に関しては、随時次世代ゲノム解析を進めている。また、これまで収集した様々なゲノム不安定性疾患のうち、コケイン症候群に関して、病態と疾患原因変異について、海外の共同研究拠点および患者家族会と協力して情報の集約を進めた。これらの情報を広く共有することで、迅速な臨床診断に役立てることを目指し、協議を行っている。
2: おおむね順調に進展している
引き続き、海外拠点を足がかりとして、ゲノム不安定性を示す症例および小児がん症例の収集を進めた。ゲノム不安定性を示す先天性の疾患群では、別疾患であっても、好発がん性、早期老化、発育異常など一部の病態がオーバーラップすることが知られる。特に、コケイン症候群やゼッケル症候群などが示す、小頭症や発育異常はゲノム不安定性疾患でしばしば観察される。そこで、これらの病態に着目し、イギリスやアメリカの患者家族会、研究者、医師、関連病院・研究施設を通して、広く症例を集めた。また、本研究期間では、小児/若年の患者で造血系に異常を示す症例の収集を積極的に進めた。特に、中国北京・上海の大学病院との連携強化に努めた。収集したサンプルは、国内でDNA修復活性評価およびゲノム解析による疾患原因の特定を試みた。いくつかの症例では、新規疾患原因と考えられる遺伝子異常を検出しており、今後、より詳細な解析が必要と考えられる。コケイン症候群疑いの症例から特定された、疾患原因変異をもつ新規の遺伝子Xは、当初DNA修復機構の1つであるヌクレオチド除去修復機構への関与が疑われたが、詳細な分子機能解析の結果、別のDNA損傷応答機構に関与する可能性が示唆され、解析を継続している。また、これまでに収集済みで、疾患原因が特定できていない症例に関して、本遺伝子Xの異常の有無を調査したところ、イギリスの症例で同遺伝子X上に疾患原因変異が確認された。以上のように、症例収集と疾患原因変異の同定および関連情報の蓄積が順調に進んでいる。
病態に着目した症例収集により、新規疾患が疑われる症例がより多く集まるようになり、そのうちいくつかの症例に関しては、次世代ゲノム解析の結果、新規疾患原因と疑われる遺伝子異常を確認している。これらの異常の真偽を確かめるとともに、今後も引き続き、病態に着目した症例収集を行い、病態/病状や遺伝子異常の情報を整理/蓄積し、未だ疾患原因が判明しない症例の責任遺伝子変異特定や今後の臨床診断への活用につなげる。症例収集の対象地域は、引き続きヨーロッパ圏、アメリカ、ロシア、中国を中心とした関連地域とし、小頭症、発育異常、好発がん性 (特に小児がん)、免疫不全などの病態を示す症例を広く収集する。解析方法は、これまでのDNA修復活性評価や、次世代シークエンサーによるexome解析に加え、質量分析装置を利用したプロテオーム解析や、次世代全ゲノム解析についても取り入れる予定である。現在、情報を取りまとめているコケイン症候群に関する報告は論文で公表するほか、コケイン症候群と紫外線高感受性症候群の病態に関して、その重篤度を決定する分子メカニズムの解明も進める予定である。
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すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (16件) (うち国際共著 9件、 査読あり 15件、 オープンアクセス 15件) 学会発表 (22件) (うち国際学会 4件、 招待講演 18件)
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