研究課題/領域番号 |
15H02978
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
阿部 雅二朗 長岡技術科学大学, 技術経営研究科, 教授 (60212552)
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研究分担者 |
杉本 光隆 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (50196755)
高橋 修 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (60236263)
塩野谷 明 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (50187332)
仲川 力 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (70249811)
藤野 俊和 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (70508514)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 安全工学 / 機械力学・制御 / 建設機械 / 不整地 / 人間工学 |
研究実績の概要 |
研究代表者らは、複雑条件下における不整地作業機械の転倒を防止し、運転者に快適な安全システムを開発するため、作業機械-不整地系シミュレータ、実機運転室シミュレータ、バーチャルシミュレータからなる「ハイブリッドシミュレータ」の基盤開発とそれを用いた各種解析を推進している。本年度は、不整地作業機械の各種稼働現場で機能する安全システムの開発に資するよう、実験解析用小型クローラクレーンの最適設計及び開発、VR機器を組み込むリアルタイムバーチャルシミュレータの開発のほか高精度三次元動的バーチャルシミュレータの基盤構築等を実施した。具体的な内容は以下の通りである。 「実験解析用小型クローラクレーンの最適設計及び開発」について、クレーン実機の動特性を正確に模擬するため、実機形状・寸法を踏まえて幾何学的相似比及び質量比を定め、関連機械規格にも準拠した上部旋回体を最適設計し開発した。現場で多用される鋼鈑補強した軟弱土質地盤上においてクローラクレーンが転倒に至る過程での各部特性を動的に解析し、地盤条件と転倒安定性の関係について考察した。本成果は日本機械学会北陸信越支部講演会で公表した。「VR機器を組み込むリアルタイムバーチャルシミュレータの開発」について、ヘッドマウンドディスプレイ及びモーションコントローラを組み込む、バーチャル空間におけるクローラクレーンモデルを構築し、レバー操作模擬も可能とし、シミュレータの実機運転環境模擬性能を向上させた。本成果は日本機械学会交通物流部門大会で公表した。「高精度三次元動的バーチャルシミュレータの基盤構築」について、つり荷及び上部旋回体の三次元解析モデルを構築し、ジブ起伏と上部旋回の複合操作時におけるクレーン動特性解析を可能とした。さらに、「不整地作業機械の施工現場の調査分析」について、調査対象とすべき作業条件及び作業環境を満たす施工現場検討も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書にて記載した研究の目的及びその達成度について、具体的な内容は以下の通りである。 「実験解析用小型クローラクレーンの最適設計及び開発」については、新型上部旋回体の強度及び剛性解析等に基づく設計から製作までが完了し、今後の実験解析が可能な状態まで開発を進めた。作業機械―不整地系シミュレータを用いた動特性解析を、鋼板補強した軟弱土質地盤上に作業機械を設置して行い、鋼板敷設方向等、機械設置地盤条件が作業機械の動特性に及ぼす影響を明らかにした。この際、転倒安全システム構築上重要なつり荷ワイヤロープ張力から算出する負荷率のほか、車輪荷重から算出する転倒危険度の有効性を異なる作業条件下で把握できたことから、おおむね順調に進展しているといえる。「VR機器を組込むリアルタイムバーチャルシミュレータの開発」については、ヘッドマウンドディスプレイ及びモーションコントローラを組込み、バーチャル空間におけるクローラクレーンモデルの構築に加え、機械操縦用レバーの操作模擬を可能とし、実機運転環境の模擬性能を向上させた。六自由度モーション装置との連動方法についても検討しリアルタイムバーチャルシミュレータの開発を推進できたことからおおむね順調に進展しているといえる。「高精度三次元動的バーチャルシミュレータの基盤構築」については、上部旋回体及びつり荷の三次元解析モデルを構築し、ジブ起伏及び旋回の複合操作時におけるクレーンの動特性解析が可能であることを示すまで実施できたことからおおむね順調であるといえる。「不整地作業機械の施工現場の調査分析」については、調査対象とすべき作業条件及び作業環境を満たす施工現場検討まで実施した。この結果を考慮した施工現場の調査分析が課題としてある。 以上のことから、目的を達成するための研究の進捗状況は「おおむね順調に進展している。」の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
複雑条件下における不整地作業機械の転倒を防止し、かつ運転者にとって快適な安全システムを開発するため、作業機械―不整地系シミュレータ、実機運転室シミュレータ、バーチャルシミュレータからなる「ハイブリッドシミュレータ」のさらなる高度化を推進する。特に、実験解析用小型クローラクレーンを用いた実験解析、リアルタイムシミュレータの開発及び高精度三次元動的バーチャルシミュレータ構築等を推進する。具体的な推進方策は以下の通りである。 平成29年度に開発の新型上部旋回体を搭載した実験解析用クローラクレーンを用いて下部走行体の設定、クローラベルト張力、カウンタウエイト質量・位置といった多様な機械側条件が荷役作業時における機械動特性に及ぼす影響を実験解析する。また、クレーンが転倒限界状態を超過する前に安定状態への自然復帰を図る転倒回避システムを設計・試作し、それらを統合したクレーンモデルを構築する。解析システムの高度化・標準化も推進する。 HMD(ヘッドマウンドディスプレイ)等よりなるVR機器を組み込み、実機運転環境の模擬性能を向上させる。統合開発環境型物理エンジン、六自由度モーション装置及び実機運転室シミュレータを統合するハイブリッドシミュレータを開発し、運転者の快適性評価、熟練度・疲労度への影響を解析する。シミュレータ開発では、多様な支持条件下におけるクレーン動特性解析の高速化を進める。 不整地作業機械の転倒動特性を多用な条件下でより高精度解析できるマルチボディダイナミクスに基づく三次元バーチャルシミュレータの基盤を構築する。クレーンモデル、クローラ-作業地盤相互作用モデルを統合したシミュレータとする。 以上を推進方策とし、リアルシミュレータとバーチャルシミュレータによる解析、統合解析及びそれらの考察結果を総合して、人と不整地作業機械が協調するハイブリッド安全システムの基盤を構築する。
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