研究課題/領域番号 |
15H03000
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
柴崎 貢志 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20399554)
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研究分担者 |
鈴木 倫保 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80196873)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | TRPV4 / 脳内温度 / 冷却 / デバイス / てんかん |
研究実績の概要 |
研究実施者はこれまでの研究で、37℃で一定と考えられてきた脳内温度が動物の行動や状態に応じてダイナミックに変動していることを見いだしている。さらに、この温度変化を脳内の温度センサー・TRPV4(34℃以上で活性化)が感知し、温度エネルギーを電気信号に変換することで神経活動に役立てる分子機構を見いだしてきた(柴崎ら、 J. Neurosci. 2007、2010、JBC 2014、FASEB J 2014など)。本研究では、脳内を人工的に加温・冷却することでTRPV4活性を操作し、難知性神経疾患の新たな治療法へとつなげることを目指している。 まず、海馬局所へのカイニン酸注入によりてんかんモデルマウスを作製した。これらのマウスに研究実施者が作製した局所組織の加温冷却デバイスを装着した。これらマウスに冷却処置(海馬温度を生理学的温度である37℃から30℃まで低下)を施すことで、てんかん発作は完全に消失させることが出来た。一方、冷却処置を施さない無処置マウスでは著しいてんかん発作が観察された。これらの結果より、局所組織加温冷却デバイスを応用したてんかん原性域の局所冷却はてんかんの有用な治療法となり得ることが示された。 そして、冷却処置を施したマウスと無処置マウスのてんかん原性域から急性海馬スライス標本を作製し、ホールセルパッチクランプ法により、記録細胞のシナプス電流や膜電位を測定すると共に、ガラス電極内に入れたFura-2を用いて、Ca2+-イメージングを行い、細胞内Ca2+濃度の定量化を行った。これらの実験により冷却処置により、てんかん発作抑制効果は得られるけれども、神経細胞の生理学的応答性に異常化が起こらないことが確認出来た。同時に、上記海馬サンプルを解剖・形態学的に解析し、冷却処置により、神経細胞の形態に異常化が起こらないのかも確認出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
有効なてんかんモデルマウスを作製し、研究実施者が作製した局所組織の加温冷却デバイスを用いたてんかん原性域の冷却によるてんかん発作の抑制度合いの評価とこの処置に伴い出現すると考えられる副作用の評価を当初の実験計画通りに調べることが出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究結果からはてんかん原性域の冷却処置に伴う副作用は観察されなかった。次年度は脳脊髄液の組成変化や血流量の変化なども指標により幅広くてんかん原性域の冷却処置に伴う副作用が出現していないかを検討する。もしも、冷却処置に伴うなんらかの副作用が観察された場合には、研究実施者の温度可変装置に備わっている加温モードで冷却処置中にも脳内温度を正常状体に戻す処置も加え、副作用を低減し、効率的な治療効果のみを得る方法を見いだす。
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