研究課題
研究実施者はこれまでの研究で、37℃で一定と考えられてきた脳内温度が動物の行動や状態に応じてダイナミックに変動していることを見いだしている。さらに、この温度変化を脳内の温度センサー・TRPV4(34℃以上で活性化)が感知し、温度エネルギーを電気信号に変換することで神経活動に役立てる分子機構を見いだしてきた。本研究では、脳内を人工的に加温・冷却することでTRPV4活性を操作し、難知性神経疾患の新たな治療法へとつなげることを目指してきた。冷却処置を施したマウスと無処置マウスのてんかん原性域から急性海馬スライス標本を作製し、興奮性シナプス電流を測定すると共に、ガラス電極内に入れたFura-2を用いて、Ca2+-イメージングを行い、細胞内Ca2+濃度の定量化を行った。冷却処置により、てんかん発作抑制効果は得られるけれども、神経細胞の生理学的応答性に異常化が起こらないことが確認した。また、東京大学薬学部・小山准教授との共同研究により、虚血性の脳浮腫では浮腫領域の神経細胞がグルタミン酸経路により発熱し、この発熱がTRPV4活性化を促すことで病態悪化が進行することを明らかにした。さらに、頭部外傷モデルを野生型とTRPV4KOマウスに作製し、その浮腫の程度を定量比較した。そして、脳浮腫ではTRPV4活性化が病態悪化の中心的な役割を果たしていることを新たに突き止めた。TRPV4は神経細胞のみならず、アストロサイト・ミクログリアにも発現していることを見いだした。そして、アストロサイトTRPV4は脳内に存在するアラキドン酸により活性化し、ギャップ結合とATP放出を介して近傍の他のアストロサイトを興奮させ、それらがグルタミン酸放出を行うことで、シナプス活性を増強していることを明らかにした。このため、てんかん病態化に伴い、ニューロンのみならず、TRPV4陽性アストロサイトの興奮性変化も病態悪化に関連している可能性が出てきた。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
Biochem Biophys Res. Commun.
巻: 495(1) ページ: 935-940
10.1016/j.bbrc.2017.11.136.
Pflugers Archiv
巻: in press ページ: in press
doi:10.1007/s00424-018-2130-3
FASEB J.
巻: 31 ページ: 1368-1381
10.1096/fj.201600686RR.
Journal of Physiology and Pharmacology
巻: 68(3) ページ: 3038
10.1016/j.pain.2011.02.024.
Scientific Reports
巻: 7(1) ページ: 2295
10.1038/s41598-017-02473-x.
J Phyisol
巻: 595 ページ: 6499-6516
10.1113/JP274562.
http://www.nips.ac.jp/cs/sibaHP/shibasaki.html