研究実績の概要 |
うつ病患者の側坐核およびうつ病モデルマウスの側坐核でBDNF蛋白質の量が増えていることが報告されていることから、側坐核にBDNF蛋白質を過剰発現させるマウスを作成した。具体的にはBDNF tetOノックインヘテロマウスとDAT-tTAのダブルトランスジェニックマウスを用いた。このマウスでは、ドパミン神経でBDNF mRNAの発現が増えており、その軸索終末である側坐核でBDNF蛋白質の増加が得られている。かつ、ドキシサイクリン含有エサで飼育すれば、BDNFの増加をキャンセルできる。ドキシサイクリン存在下でオペラント行動を覚えさせ、学習成立後にBDNF増加を誘導させた。オペラント行動の一つである3-choice serial reaction time taskを行い、意欲、注意、衝動性、固執性、運動、食欲を経時的に評価したところ、いずれの項目にもBDNF発現誘導と非誘導で有意な変化が見られなかった。isoform 1,2,3のノックダウンマウス(n=6)とisoform 4,5,6,7のノックダウンマウス(n=6)のオープンフィールドテスト、高架式十字迷路を行ったところ、いずれのテストでも有意な差は見られなかった。これらの結果は、isoform選択的ノックアウトの最近の研究(Neuropsychopharmacology 2016)と一致していた。検体数を増やしてうつ・不安様行動について更なる検討を要する。一方で興味深い成果として、isoform 4,5,6,7ノックダウンマウスは、体重増加が見られた。うつ病における食欲とBDNFの関係は今後のテーマになりうる。
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