脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現が増えること・減ることが気分を変化させ、精神疾患発症に関与すると考えられていた。本研究では、この仮説を実験動物個体で証明することに取り組んだ。BDNFの発現を時期特異的、脳領域特異的に増やす・減らす介入を行った。ストレス負荷が無いと考えられる通常飼育では、いかなる介入も情動・認知に影響を与えなかった。涙の基礎分泌を自律神経応答の指標として、ストレス負荷からの回復過程を調べたところ、BDNFの発現低下は、ストレスからの回復を遅くさせた。このことから、BDNFは健康な状態よりもむしろストレスが負荷された状態において、機能を発揮する分子であると推測された。
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