最終年度である今年度は、本研究テーマにかんする海外の専門家を招聘して講演を行うことと、本研究の構成員である各研究者がそれぞれ研究成果を出し、それらをまとめた報告書を発行した。 海外からの招聘講演会については、ニューロークのメトロポリタン美術館ゲスト・キュレーターで、10年にわたり同美術館の版画室でフランスおよびイタリアの版画を担当し、2019年秋に同美術館で行われる「ヨーロッパ初期エッチング」を長年準備してきたキャサリン・ジェンキンス氏に「フォンテーヌブロー派の版画 1542年から1547年にかけて」と題する講演を、2019年1月26日に日仏会館において、日仏美術学会の共催で行った。ジェンキンス氏は、フォンテーヌブロー派の版画というテーマでオックスフォード大学にて博士号を取得しており、2017年には3巻本のフォンテーヌブロー派の版画の総カタログを出版している、この分野の第一人者である。講演内容も、複雑なフォンテーヌブロー宮殿での工房の在り方や、技法や様式から受容の問題まで幅広く、意義深いものであった。 報告書については、次のような論文により構成されている。保井亜弓「16世紀ドイツのエッチングー鉄版エッチングから銅板エッチングへー」、幸福輝「銅版画のパラゴーネーエッチングの歴史記述的研究ー」、吉澤京子「イタリア初期エッチング」、田中久美子「フォンテーヌブロー派のエッチングー風景表現を中心に」それに加えて、上記のジェンキンス氏の講演の原文と和訳を収録した。
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