研究課題/領域番号 |
15H03435
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
布川 日佐史 法政大学, 現代福祉学部, 教授 (70208924)
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研究分担者 |
藤原 千沙 法政大学, 大原社会問題研究所, 教授 (70302049)
樋口 明彦 法政大学, 社会学部, 教授 (70440097)
堅田 香緒里 法政大学, 社会学部, 准教授 (40523999)
眞保 智子 法政大学, 現代福祉学部, 教授 (10341794)
湯浅 誠 法政大学, 現代福祉学部, 教授 (90738593)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 福祉関連 / 自立支援 / 求職者基礎保障 / アクティベーション / ワークフェア / 生活困窮者 |
研究実績の概要 |
1 国内調査は、生活困窮者自立支援事業の任意事業に取り組んでいる自治体を対象として、支援の実態について調査を行った。 大阪府下の自治体では、「その他の事業」(「その他生活困窮者の自立の促進を図るために必要な事業」)もしくは「相談支援事業」に法律相談を位置づけ、予算を付けて弁護士に委託料を払い、法律扶助制度を活用し、債務整理、家賃滞納、離婚などの問題解決にあたっている。大阪市及び東大阪市の担当者へのヒアリングを行い、弁護士による生活困窮者法律相談を事業化してきた経過と、その成果および課題について明らかにした。法律専門家を支援に組み込むことで、深刻な問題に対応できていることを確認した。 京都市社会福祉協議会職員へのヒアリングを行い、京都市が「その他の事業」に位置づけている「地域あんしん支援員設置事業」の成果と課題を明らかにした。支援員が担当しているのは、6~8件のケースである。地域において専門職が必要なだけの時間をかけられる濃密な寄り添い支援が可能になっていることを確認した。 これらのヒアリング成果は、布川日佐史「自立支援法と生活保護法の関係」日本再建イニシアティブ(RJIF Intern Project)http://rebuildjpn.org/doc/internship/6_fukawa.pdfにまとめた。 2 ドイツ調査は、社会法典Ⅱ、Ⅲ、Ⅷのどれからも漏れる「支援の到達が困難な若者」への支援に焦点をあて、就労指向支援の見直しに向けた法改正の必要性と具体的な支援の実態を調査した。2015年から実施されている連邦労働社会省プロジェクト「支援の到達が困難な若者への支援」(リスペクトプロジェクト)の実施団体へのヒアリングを行った。また、2016年求職者基礎保障法改正で創設された第16h条の実施機関への調査を行った。なお、見直しのベースになっている理論的な論点については、残念ながらドイツ側研究者との日程調整がつかず、ヒアリングができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生活困窮者自立支援法については、事業の内実を拡大し、着実な成果を上げている事例の検討を行うことができ、改善の方向と課題を確認することができた。諸支援事業の組み合わせについては、一昨年の相模原市へのヒアリングから明確にできたし、相談支援事業そのものの拡充については、昨年の大阪市、東大阪市、京都市へのヒアリングから明確にできた。 他方、ドイツ調査を通じて、労働政策、自治体福祉政策、教育政策などの連携の在り方についての比較対象モデルを明確にすることができた。とりわけ、労働行政・労働政策の位置づけが財源及び実施体制に直結する問題として重要であることを再認識した。なお、支援が届いていない若者に対するアプローチについては、その紹介それ自体が日本への大きな示唆となる。 また、求職者基礎保障法改革において、自立支援を権利として保障する(自立支援サービスに対する請求権を認める)方向で検討が行われていることも知った。比較研究を進めるうえで重要な気付きを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1 最終年度としてまとめの作業を行う予定であったが、昨年度、ドイツ研究者へのヒアリングができなかったことから、まとめ作業を行う前に、ドイツ調査を夏季休暇中に参加人数を限って行うこととする。それによって、就労指向支援のシステムと評価指標に関して、理論的な論点の検討をさらに進めることとする。 2 秋以降は、日独それぞれの調査結果をもとに、就労指向支援サービスの基本理念と評価システムについてまとめることとする。その際、システムづくりの視点のみならず、新たな視点として、利用者への請求権保障の在り方についても検討し、まとめることとする。
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