研究課題/領域番号 |
15H03436
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
湯澤 直美 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (00277659)
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研究分担者 |
藤原 千沙 法政大学, 大原社会問題研究所, 教授 (70302049)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 社会政策 / 社会福祉 / 貧困 |
研究実績の概要 |
先進諸国における「子どもの貧困」が社会問題化するなか、日本においても2013年に子どもの貧困対策推進法が制定され、政府による取り組みと並行して,地方自治体による実態調査や計画策定が進められている。本研究は,政府/自治体の施策に焦点をあて、効果的な子どもの貧困対策について理論的・実証的な検証を行い,包括的な子どもの貧困対策のグランドデザインと政策評価の在り方を提示することを目的としている。 3年目にあたる2017年度は以下の諸点に取り組んだ。 第一に,全国の自治体の動向を把握するために,都道府県,政令指定都市・中核市,市町村,特別区における子どもの貧困対策に関する情報をホームページ・新聞記事等の検索によって収集し蓄積した。 第二に,モデル的事業を展開している自治体と連携し,実態調査を実施した。具体的には,①ひとり親世帯の保護者を対象としたアンケート調査及びグループインタビュー調査,②高等技能訓練促進費等給付金事業を受講した経験のある保護者へのヒアリング調査を実施した。 第三に,全国の都道府県,政令指定都市・中核市,特別区(東京23区)を対象に,生活支援・子育て支援に焦点をあてて,ひとり親施策の実施状況と課題を把握するアンケート調査を実施した。 第四に,海外の研究・政策動向を把握し、日本の政策評価に役立てるために,海外文献を収集するとともにドイツの若者支援団体・支援制度の情報を収集し,考察を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
子どもの貧困対策のうち,保護者への就労支援,生活支援・子育て支援に焦点をあてて,当事者からみた施策の効果と課題を把握するとともに,自治体担当者からみた施策の課題を把握することができた。 とりわけ,国の子どもの貧困対策においては,保護者への有効な就労支援策の検討が希薄であるために,2017年度には高等技能訓練促進費等給付金事業を受講した経験のある保護者へのインタビュー調査を実施した。同事業は資格取得による正規就労をめざす就労支援として意義が大きいものの,資格取得には,本人の学歴や健康などの諸条件に加え,貯蓄等の経済資源,子育てを支える親族資源等が必須条件であることが把握された。先行研究では明らかにされていない制度的課題を析出することができ,政策提言に寄与しうる知見を得ることができた。 また,グループインタビューの実施を通して,調査への参画によって当事者が自治体施策への意見を発信する回路となりうる可能性や当事者参画による政策評価の手法について検討することができた。 更に,海外の研究・政策動向の把握からは,国・自治体・実施機関の関係性、政策評価の指標や手法、就労支援と人間の成長・発達支援、ジェンダー視点の重要性といった課題を確認し、参照資料を収集することができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度を迎えるため、研究総括として以下の諸点に取り組む。 第一に,本研究の最終年度のまとめとして,自治体を対象に総括的なアンケート調査を実施する。具体的には,ひとり親施策を含む子どもの貧困対策について,法律施行後の自治体における政策の推進状況と課題を析出できるよう,調査を設計する。 第二に,自治体関係者を対象としたシンポジウムを開催する。3年間の研究成果を共有するとともに,各自治体での実態調査に関する検討課題,計画遂行と政策評価の視点について最終年度としての考察を深める。また,「子供の貧困対策大綱」の見直しの時期であることから,自治体関係者の意見を集約する機会としても活用し,見直しの視点を具体化する。 第三に,最終年度として,これまで構築してきた本研究プロジェクトのホームページの充実を図り,成果を発信することを通して社会に還元する。
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