研究課題
T細胞の反応を応用したがんの免疫学的治療においては、T細胞応答がHLAのハプロタイプに拘束されるため、治療の対象は、日本においては主にHLA-A24をもつ患者、欧米においては主にHLA-A2を持つ患者に限定され、それ以外の頻度の低いHLA ハプロタイプを持つ患者は、治療や研究の対象から外れてきた。我々は、これまでに抗原ペプチド/HLA四量体を用いた単一T細胞解析により、最短10日間で抗原特異的T細胞の受容体(TCR)を取得する方法(hTEC10)を開発してきた。本研究では、hTEC10法をさらに発展させ、HLA のハプロタイプに関係なく、がんに特異的なTCR を、迅速・確実に取得・作製する技術を確立することを目的に研究を進めた。平成27 年度は、まず、内在的に抗原を発現する細胞に対する反応を指標に抗原特異的ヒ球の解析よりがん特異的TCR を取得する手法の確立を行った。モデルシステムとして、K562 細胞にHLA-A24、CD137 リガンド、CD80を発現させた人工抗原提示細胞(artificial antigenpresenting cell, aAPC)を作製し、このaAPC にEB ウイルス由来BRLF-1 タンパクのcDNAを導入し、内在的にBRLF-1 タンパク質を発現した抗原提示細胞として用いた。この細胞と、健常人ボランティアの末梢血リンパ球とを共培養し、CD137の発現を指標にセルソータにて活性化T細胞を単一細胞ソートし、取得した細胞のTCR レパートリーを解析した。その結果、BRLF-1特異的TCRを取得することができた。さらに、マウスがん浸潤リンパ球のTCRを解析し、がん特異的TCR を取得することができた。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度は、ヒトの系で、内在性抗原を発現した抗原提示細胞に反応するT細胞から抗原特異的T細胞受容体(TCR)を取得することと、担がんモデルマウスを用いて、腫瘍浸潤リンパ球中のT細胞から腫瘍特異的TCRを取得することを計画していたが、どちらも達成できたので。
平成27年度で取得してマウスの腫瘍特異的TCRを発現させたT細胞用いて、in vitroおよびin vivoにて抗腫瘍化効果を示すかを検討する。また、ヒトにおいても腫瘍浸潤リンパ球を解析し、腫瘍特異的TCRを取得できるかを検討する。
すべて 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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