研究課題
我々は、これまでに抗原特異的単一T細胞より、迅速・高効率に抗原特異的T細胞受容体(TCR)を取得する方法を開発してきた。本研究では、その方法をさらに発展させ、HLAのハプロタイプに関係なく、がんに特異的なTCRを、迅速・確実に取得・作製する技術を確立することを目的とする。平成27年度は、担癌マウスモデルを用いて、腫瘍浸潤CD8+ T細胞のTCRを解析し、腫瘍内でクローナルに増殖しているT細胞のTCRを取得した。平成28年度は、そのTCR cDNAをマウスT細胞に遺伝子導入し、発現させ、そのT細胞が抗腫瘍効果を示すかを検討した。まず、in vitroにおいて、取得TCRを発現させたT細胞と腫瘍細胞を共培養すると、約7割のTCRが腫瘍細胞と反応し、IFN-γの分泌が誘導された。さらに、腫瘍細胞に反応し、IFN-γの分泌を誘導したTCRを導入したT細胞がin vitroにおいて腫瘍細胞に対して細胞傷害活性を示すことを見出した。次に、in vitroにおいて強い抗腫瘍効果を示す2つのTCRを選択し、そのTCRを発現させたT細胞を作製した。マウスの腫瘍細胞肺転移モデルを用い、取得TCRを発現させたT細胞をマウスに投与することで、腫瘍の肺への転移が抑制されるかを解析した。その結果、in vitroにおいて抗腫瘍効果を示したTCRが、in vivoにおいても抗腫瘍効果を示すことがわかった。現在、がん患者の腫瘍浸潤T細胞のTCRも解析しており、同様にクローナルに増殖しているCD8+ T細胞を見出し、そのTCRを取得している。今後、その抗腫瘍効果を解析していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初申請した計画通りに進んでいる。マウスの腫瘍浸潤リンパ球より、腫瘍特異的T細胞のTCRを取得し、そのTCRを発現させたT細胞がin vivoにおいて抗腫瘍効果を示すことができた。今後、ヒトの系においても腫瘍特異的T細胞のTCRを取得できることを示すことができれば、100%の達成度となる。
現在、がん患者の腫瘍浸潤リンパ球中からも、クローナルに増殖しているCD8+ T細胞のTCRを取得することができている。今後、このTCRを導入したT細胞が抗腫瘍効果を示すかを解析していく予定である。
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