研究課題
本研究の目的は、造精機能障害を伴う男性不妊症に関わる分子基盤の全容解明につながる知見を得ることである。本年度は、男性生殖機能に影響する遺伝要因に関する多面的な研究を行い、以下の知見を得た。1.遺伝疫学的手法により、4つのSNP(single nucleotide polymorphism)遺伝子座(rs7867029、rs12870438、rs7174015、rs724078)が日本人男性の生殖機能(精液検査値、有妊/不妊)に与える影響を精査し、新規知見を得た。また、全ゲノム関連解析手法を用いて、男性の生殖特性値の一つである精子運動率に影響を及ぼす遺伝要因をゲノム全域から探査し、日本人の精子運動率の個人差に関連する新規遺伝子座候補を見出した。2.日本人男性集団において、性腺刺激ホルモンの一つであるFSH(Follicle stimulating hormone)の血中濃度の個人差に寄与する遺伝要因としてCYP19A1(cytochrome P450, family 19, subfamily A, peptide 1)遺伝子SNPを新たに見出した。3.性ホルモン結合グロブリン(sex hormone-binding globulin, SHBG)遺伝子SNPsと、血中テストステロン濃度ならびにSHBG濃度との関係につき遺伝疫学の観点から精査し、SHBG遺伝子SNPsは血中SHBG濃度変化を介して、日本人男性の血中テストステロン濃度に影響を及ぼし得ることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
本課題の開始に必要であったヒトゲノム・遺伝子解析研究修正申請に対する機関承認も滞りなく得ることができ、初年度計画の主要部分は概ね順調に進んだ。
次年度以降は、造精機能障害を伴う男性不妊症のゲノム・エピゲノム解析にも注力する。当初計画に従い、疾患発症に対する(1)新生突然(de novo)変異の影響、(2)精巣特異的なエピジェネティック変異の影響につき、次世代シークエンス技術を用いた網羅的解析から明らかにする。加えて、(3)種々のタイプ(de novo変異、エピゲノム変異、遺伝的リスクSNPなど)の変異が蓄積する「ホットスポット遺伝子」の同定を指向した多面的ゲノム・エピゲノム研究を実施するとともに、ヒト造精機能障害に関わる遺伝子群のゲノム・エピゲノム的特性を解明する。次年度は、主として、Y染色体欠失などの染色体構造異常を認めない原因不明の非閉塞性無精子症患者(精子形成不全を伴う男性不妊症)由来ゲノムDNA等を用いて、全エクソンシークエンシング手法に基づき、疾患発症に関わるde novo責任変異の同定を目的とした研究を展開する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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