研究課題
本研究の目的は、造精機能障害を伴う男性不妊症に関わる分子基盤の全容解明につながる知見を得ることである。その過程で、種々のタイプ(新生突然 (de novo)変異、エピゲノム変異、遺伝的リスクSNPなど)の変異が蓄積する「ホットスポット遺伝子」の同定を目指す。本年度は、主として、Y染色体欠失などの染色体構造異常を認めない原因不明の非閉塞性無精子症患者(精子形成不全を伴う男性不妊症)由来ゲノムDNAを用いて、全エクソンシークエンシング(エクソーム解析)手法に基づき、疾患発症に関わるde novo責任変異の同定を目的とした研究に注力した。加えて、男性生殖機能に影響する遺伝要因に関する多面的な研究を行い、以下の知見を得た。1.特発性非閉塞性無精子症患者のエクソーム解析を実施し、遺伝子変異の推定有害度、日本人集団における頻度、遺伝子の発現組織などの情報も加味して、男性不妊症罹患者のみに認めるde novo変異を有する遺伝子群を明らかにした。加えて、それら遺伝子の精巣におけるエピジェネティック制御(DNAメチル化およびヒストン修飾)パターンを分析し、次年度の分析対象となる「ホットスポット遺伝子候補」遺伝子群の絞り込みを完了した。2.SNP(single nucleotide polymorphism)インピュテーションを伴う全ゲノム関連解析に基づき、遺伝疫学的手法から日本人男性の生殖機能(精液検査値、生殖関連ホルモン血中濃度)の個人差に関わる遺伝要因を探査し、特定の精液検査値、血中ホルモン濃度に影響を及ぼす新規SNP遺伝子座候補を複数見いだした。
2: おおむね順調に進展している
本年度の主要課題であった特発性非閉塞性無精子症患者のエクソーム解析から着実に成果を得ることができ、本年度計画は概ね順調に進んだ。
次年度は、造精機能障害を伴う男性不妊症において、種々のタイプ(de novo変異、エピゲノム変異、遺伝的リスクSNPなど)の変異が蓄積する「ホットスポット遺伝子」の同定に注力する。当初計画に従い、(計画1)前年度までの研究により見いだしたde novo変異を有する遺伝子群を「ホットスポット遺伝子候補」として、次世代シークエンス技術を用いて、追加症例に対する更なるゲノム変異解析を行い、候補変異の絞り込みを行う。加えて、精巣特異的なエピジェネティック変異の影響につき、次世代シークエンス技術を用いた解析から明らかにする。(計画2)計画1で統計学的に有意な変異蓄積を認める責任候補遺伝子については、男性不妊症の遺伝的リスクに関わる可能性を評価するために、非閉塞性無精子症を患者群とした症例対照関連解析を実施する。種々のタイプの変異が蓄積する「ホットスポット遺伝子」の可能性および造精機能障害を伴う男性不妊症の発症への寄与度などを精査することで、責任候補遺伝子の遺伝学的特性を明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://big.w3.kanazawa-u.ac.jp