研究課題/領域番号 |
15H04422
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
佐藤 拓哉 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30456743)
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研究分担者 |
渡辺 勝敏 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00324955)
徳地 直子 京都大学, 学内共同利用施設等, 教授 (60237071)
舘野 隆之輔 京都大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (60390712)
金岩 稔 東京農業大学, 生物産業学部, 准教授 (60424678)
瀧本 岳 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (90453852)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 寄生者介在型エネルギー流 / 宿主操作 / ハリガネムシ / フェノロジー / 群集動態 |
研究実績の概要 |
本研究では、申請者が提唱している寄生者介在型のエネルギー流 (PMEF, Parasite-Mediated Energy Flow) の時間変動性に着目し、(1) PMEFが異なる時間スケールでどのように群集動態に影響を及ぼし、(2) 寄生者自身の感染動態にフィードバックするか、を実証と理論を統合したアプローチで検証することを目的としている。 本年度は、沖縄から北海道に至る全国9サイトにおいて、ハリガネムシ類やその宿主となる陸生・水生昆虫類の季節消長をモニタリングするサイトを確立・実施した。さらに、この広域モニタリングから明らかになった、ハリガネムシ類が駆動するPMEFの時間変動を(1)季節間で大きくピークタイミングがずれる場合と(2)同じ季節内に時間的な集中度が異なる場合(持続的 vs. 集中的)に分けて、それぞれがPMEFの受け手である河川性サケ科魚類の個体間関係や個体成長、および水生昆虫の群集動態に及ぼす影響を大規模な野外操作実験と大型プールを用いた飼育実験によって予備的に検証した。(1)の大規模野外操作実験においては、予備的に晩夏から初秋に人為的にサケ科魚類の餌資源流入を引き起こす実験を約2か月間実施し、サケ科魚類の個体成長を大きく上昇させうることを確認した。一方、(2)の大型プールを用いた飼育実験では、期間当たりの総給餌量が同じであっても、その時間変化が集中的な場合と持続的な場合で、サケ科魚類の個体間関係の強さが大きく異なり、結果として成長の個体間変異も大きく異なることが予備的ではあるが、明瞭に確かめられた(持続的な場合に個体間の成長差が大きくなる)。次年度の以降の実験では、上記のような資源量の時間変動に依存したサケ科魚類の成長応答が河川の群集動態や生態系機能、ハリガネムシ類の感染動態とどのように関連するかを実験的に検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
日本全国のモニタリングサイトについては、当初予定していたサイト数以上に確立することができた。これにより、ハリガネムシ類と宿主の寄生関係の全国的なパターン、およびそれと森林から河川への宿主供給の時間パターンとの関係が明らかになりつつある。 野外実験による検証においては、大規模な野外操作実験の予備実験を完了し、次年度に速やかに本実験にうつれる状況まで達している。また、大型プールを用いた飼育実験についても同様に、概ね仮説を支持する予備実験結果が得られ、次年度以降にすみやかに本実験を実施することができる。
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今後の研究の推進方策 |
全国のモニタリングサイトの設営については、東北地方のサイトがないため、次年度以降に当該地域のモニタリングサイトを増設する予定である。その他のサイトについては、継続することで、地理的変異と年変動を分離して評価できるようにする予定である。 野外実験による検証については、寄生者が駆動するエネルギー流の2つの時間変化パターンの影響を検証する予備実験がいずれも完了しているため、速やかに本実験を実施して論文化に進む予定である。
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