研究実績の概要 |
本研究では、ストレス顆粒とオートファジーによる蛋白分解およびその破綻による病的な蛋白蓄積の分子機構を明らかにする。さらに、ストレス顆粒とオートファジーに異常を持つマウスにおける神経変性疾患の発症病理を明らかにする。 1)ストレス顆粒に局在し、活性酸素の制御に関与するUSP10の欠損マウス(USP10-KOマウス) を樹立した。すべてのマウスが300日以内に死亡した。USP10欠損マウスの血球系細胞の数をフローサイトメトリー法により定量した。USP10-KOマウスでは、すべての血球系細胞数が減少し、造血不全を発症した。このUSP10-KOマウスにおける骨髄不全は造血幹細胞数の著減によることが明らかになった。また、この造血幹細胞数の減少は、USP10欠損胎児肝臓のE17.5で観察された。USP10-KOマウスの造血幹細胞を造血幹細胞に対する増殖因子(SCF, TPO, FLT3-ligand, interleukin (IL)-3, and IL-6)の存在下で培養すると、野生型細胞と同等に増殖した。しかしながら、増殖因子の中からSCF(stem cell factor)を除去した培地で培養すると、野生型細胞よりも強く細胞死が誘導された。この細胞死は、野生型USP10では抑制されたが、脱ユビキチン化酵素活性を欠損したUSP10では抑制できなかった。以上の結果は、USP10が造血幹細胞の細胞死を特異的に抑制する脱ユビキチン化酵素であり、造血幹細胞の維持に必須の役割を果たすことを示す。 2)脳特異的USP10-KOマウスを樹立した。このマウスにより、脳における、USP10およびストレス顆粒の役割を解析する予定である。 3)骨特異的USP10-KOマウスを樹立した。このマウスにより、骨におけるUSP10およびストレス顆粒の役割を解析する予定である。
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