研究課題/領域番号 |
15H05344
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
木村 郁夫 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80433689)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 短鎖脂肪酸 / 脂肪酸受容体 / GPCR / 生活習慣病 / 肥満 |
研究実績の概要 |
我々が作成したaP2-Gpr43過剰発現(aP2-Gpr43トランスジェニック)マウス脂肪組織において、脂肪細胞特異的なインスリンシグナルの抑制による脂肪蓄積阻害による肥満に対する抵抗性が確認できている。この作用について、脂肪細胞に発現するGPR43による直接的なインスリンシグナル抑制メカニズム以外に、マクロファージに発現するGPR43を介した間接的な作用メカニズムについての検討を本研究課題において進行中である。我々は独自にGPR43が活性型マクロファージに高発現すること、aP2-GPR43TGのマクロファージにおいて脂肪組織特異的に炎症性サイトカインTNF-aの過剰産生が誘導されることを見出した。したがって、脂肪組織でのインスリン抵抗性の増大とマクロファージに発現するGPR43の関係について今年度は、脂肪組織特異的GPR43TGやGPR43cKOマウス由来のマクロファージを用い、細胞レベルでの作用メカニズム、細胞内シグナルについて検討を行った。結果、M1マクロファージ、M2マクロファージ共にGPR43が高発現しており、腹腔内マクロファージにおいてGPR43はTNF-aの分泌抑制的に働き、一方でM2マクロファージに発現するGPR43はTNF-a分泌促進的に働くことがわかった。すなわち、肥満による脂肪組織慢性炎症時において、GPR43はM1マクロファージのTNF-aを抑制することで抗炎症作用による代謝機能悪化に対し抑制的に作用し、一方で健常時において、GPR43はM2マクロファージを介してTNF-aの分泌を促進することにより、軽度の炎症を引き起こす結果、過剰な脂肪細胞へのエネルギーの蓄積にブレーキをかける役割を果たしている可能性が示唆された。今後、更に、細胞レベルでの検討に加え、GPR43TGやGPR43KOマウスを用いた in vivoレベルでの機能解析を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究年度においてGPR43が関与する脂肪組織におけるインスリン抵抗性の増大の起因となる脂肪組織炎症の正確な分子レベルでの機能メカニズムと細胞内シグナルの特定に成功した。また、免疫系細胞の中でも、原因になる細胞の絞り込みにも成功し、本研究テーマに関して最終段階に入っていると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、脂肪組織炎症のGPR43発現マクロファージからのin vivoにおける作用の証明を行い、この腸内細菌と短鎖脂肪酸受容体を介した脂肪組織における脂肪蓄積抑制メカニズムに関する統合的理解についての解釈として結論づける。 一方で、新規短鎖脂肪酸受容体の機能解析など、現在進行中の派生テーマに関しては、次の課題に繋げることが出来るような基礎データの新たな蓄積を目指す。
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備考 |
研究室のホームページ
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