研究実績の概要 |
近年、腸内細菌がその宿主のエネルギー調節や栄養の摂取などのエネルギー恒常性維持に深く関与する結果、肥満や糖尿病などの病態に影響を及ぼすことが科学的根拠に基づいて証明され始めた。そこで、申請者らが従来から継続的に研究を進めており、世界的にも評価を受けている「食」由来の腸内細菌による代謝産物としての栄養を認識する短鎖脂肪酸受容体の研究を通じて、次なる展開としての腸管を起点とした宿主包括的エネルギー代謝ネットワークの解明に着手した。本年度は、免疫系組織を介した腸内細菌叢変化からのエネルギー寄与における検討と、胎児の発達に及ぼす短鎖脂肪酸受容体の影響について検討を行った。本年度において我々は特に, 免疫系を介した腸内細菌叢変化からのエネルギー代謝に与える影響の検討について焦点を当てて研究を行った。結果、肥満による脂肪組織慢性炎症時において, GPR43はM2マクロファージを介してTNF-aの分泌を促進することにより, 軽度の炎症を引き起こす結果, 過剰な脂肪細胞へのエネルギーの蓄積にブレーキをかける役割を有する可能性が示唆される。今後、マクロファージGPR43を介した脂肪組織慢性炎症についてより詳細な検討を行うためには、GPR43cKOマウスを用いて、M1、M2特異的なGPR43遺伝子欠損マウスを作成し、in vivoでの影響を検討する必要がある。また、我々は、短鎖脂肪酸受容体が胎児期より発現しており、母体血中短鎖脂肪酸が胎児発達へ何らかの影響を与えている可能性を実験結果から見出しているが、こちらは期間内においてまとまった成果をあげることは出来なかった。したがって、こちらについても今後、詳細なメカニズム解明を続けていきたい。
|