研究課題/領域番号 |
15H05555
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
小倉 鉄平 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (90552000)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 局所表面 / 特異サイト / 超吸着種 / 量子化学計算 / メタン水蒸気改質 / 反応機構 / 反応一般則 |
研究実績の概要 |
本研究では、独自に考案した“超吸着種”概念を用いて、高温不均一表面反応機構の自動生成アルゴリズムを開発し、触媒設計に資する表面反応解析基盤を開発することを目的とする。解析基盤開発に必要な研究課題として、1)表面反応機構の分類化、2)局所表面構造を包含した表面反応一般則の確立、3)反応機構自動生成アルゴリズムの考案、4)自動生成プログラムの実装、の4つにブレイクダウンし取り組む。 3年目となる平成29年度は、2)の課題の拡張および3)の課題を主に実施した。これまでの研究でNi表面においては反応一般則を確立することができたため、吸着エネルギーとdバンド中心との相関を示すdバンド理論を適応し、Niと同周期の4d遷移金属については反応一般則を拡張できることが分かった。しかし他周期の遷移金属については一般則の精度が十分ではなかったため、平成30年度まで研究実施期間を延長し追加の量子化学計算を行うことで一般則の補正を行い、2)の課題の他金属への拡張を概ね達成することができた。同時並行で反応機構自動生成アルゴリズムの作成に着手し、まずは一般則で必要とされる仕事関数・価電子数・配位数・dバンド中心値などの要素情報のデータベース化を行った。さらに一般則により得られた各表面化学種の吸着エネルギーを用いて、反応エネルギーや活性化エネルギーを反応種類ごとに分類して推測するアルゴリズムを作成し、メタン水蒸気改質の素反応に対してアルゴリズムの検証を行い、結合エネルギーの細分化を加えれば作成したアルゴリズムが十分妥当であることを明らかにした。 これらの研究実施内容について論文1報、国際および国内学会において4件の成果発表を行った。特に、本研究内容の一部について日本燃焼学会誌において招待論文を執筆しており、触媒開発における本研究の重要性が引き続き評価されていると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2)の研究成果の他金属表面への拡張は、平成29年度中に達成する予定であった。しかし、様々な金属表面における吸着エネルギー等の文献データと比較・解析した結果、他周期の遷移金属への一般則の拡張には追加の量子化学計算が必要となったため、平成30年度途中まで達成時期がずれこんだ。またその影響をうけ、3)の課題についても平成29年度中にある程度見通しをつける予定であったが、自動生成に必須な要素情報のデータベース化までは到達したものの、肝心の反応を自動的に予測して反応機構に追加していくアルゴリズムについては平成29年度中には完成できなかった。しかし、このような事態が生じることもある程度は想定内であり、残りの研究期間内には十分取り戻すことが可能であると考えている。そのため、総合評価としては「やや遅れている」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、継続研究課題としてまずは3)反応機構自動生成アルゴリズムの考案を達成した上で、4)自動生成プログラムの実装を実施し、最終的に触媒設計に資する表面反応解析基盤を開発する。前年までに得られた表面反応一般則を熱力学データ及び反応速度定数という形に落とし込み、反応機構自動作成に必要なデータベースを完成させる。自動生成において重要となる起こりうる反応パターンの予測・展開については、気相でのノウハウおよび今までの経験と知識に基づき、全可能性を考えるのではなく主要な反応経路(つまり反応エネルギーが最も低い反応経路)を中心に予測した上で副生成経路を追加してゆくような手法を考案し、アルゴリズムとして実装する。 研究の円滑な遂行のため経験豊富な博士研究員を引き続き雇用する予定ではあるが、やむを得ない事情により博士研究員が急きょ確保できない状況になった場合は、複数の学生アルバイトを雇い研究補助をさせる事で対応する。また、今までは量子化学計算を元に反応速度一般則を確立してきたが、予算・時間等に余裕があれば分子動力学計算ソフトウェアなどを購入し、他の計算手法による一般則の妥当性の検証・拡張などを行う。
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